第五話「手作り市と職人」
クラウドファンディングでモノづくりの洗礼を浴びて以降の私は、職人としての高みを目指して腕を磨くことを放棄していたと言ってもいい。それよりも手作り市などでの小遣い稼ぎを優先し、ほどほどの手間で作れて値段もお手頃な木工雑貨を作ることにいそしんでいた。
え?クラウドファンディングはどうなったのか? 手短にご説明すると、モノづくりのキビシさを味わいつつもなんとか乗り越えることができた。そのキビシさは、数々の詞をメロディーにのせて世に送り出してきた小田和正さんであっても言葉に出来ないであろうと思われ、私などが言葉に出来るはずもなく語れば単なる苦労自慢のようになってしまう。
今にして思えば、試作品しか作った事がない独学の素人職人がいきなり50個近い注文を受けて苦労しないはずが無いのだが。かといってただの苦労話を垂れ流すことを私はよしとせず、また皆様もお求めでないだろうから、この話は割愛する事にした。
とにかくその時のキビシさにより、私のモノづくりへの意欲は急速にしぼんでいった。それからしばらく、私は職人として長すぎる遠回り、時間の無駄遣い、あるいは現実逃避とも言える日々を過ごした。
そして今、意欲がしぼんだ職人の怠惰な日々を赤裸々に告白する”新たなる絶望日記”がはじまる!
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