姫路城

先日、かねてより訪れたいと思っていた姫路城に行ってきた。天気予報では雨が危ぶまれたが、幸いにも晴れたので、駅前で自転車を借り、城を見るついでに市内を巡ってみることにした。

駅を出て目に入ってきたのは真っ直ぐな大通り。通り沿いに視線を動かした先に姫路城が見える。白鷺城とも呼ばれる姫路城は、その名の如く、白く優雅に佇みシルエットが美しい。平成の改修直後は正に白亜に輝いていたが、3年経って少し落ち着いた感がする今の方が個人的には好ましい。

隣接する好古園は、大小異なる9つの庭園からなる見事な日本庭園で、当時の屋敷や通路に沿って区割りされている。瀬戸内の代表的なアカマツ林をイメージした「松の庭」、日本の代表的な植物の竹を植栽した「竹の庭」といった、それぞれに趣向を凝らした庭園の散策は、その向こうはどうなっているんだろうとワクワクする。

竹の庭

大通りと並行して大きな商店街がある。その中に今はあまり見かけなくなった昔ながらの喫茶店があった。城と庭園で歩き疲れた足を休めるのにちょうどいい。ひと休みしよう。

メニューを開くと姫路名物「アーモンドトースト」とある。好奇心と甘いものを口にしたい欲求を満たすために早速注文する。

待つこと数分、出てきたトーストに噛り付く。ほんのりと甘いアーモンドバター、こんがりと焼けサクサクするアーモンドスライスがたまらない。これはペロリと1枚いってしまう。

アーモンドトースト

ところで、今回利用したのは「姫ちゃり」というシェアサイクル。旅行先では自転車を借りても駐輪場所に困ることも多いが、姫ちゃりは観光や買い物などが出来る場所に専用のサイクルステーションがあり便利そうだ。利用してみると思っていた以上に快適に市内を周れた。利用料金も安く、駐輪にも困らず、一番近いサイクルステーションに返却すればよい。これはシェアサイクルというコンセプトのもと、レンタサイクルというサービスをユーザー視点でシステム化し、心地よい体験を提供するということまで考えた、まさにデザインそのものである。

その後、自転車で市内を巡り行き着いたのが灘菊酒造。手柄山という奈良時代初期に編纂された『播磨国風土記』に由来する地域にあり、1910年(明治43年)から続く老舗の酒蔵である。ここで当時の酒蔵や道具類を見学。直売所では、大吟醸や限定酒、新商品など、とても美味しいお酒を散々試飲した後、大吟醸の酒粕を購入した。酒粕の甘酒が大好物である。

土産を買って直売所を出ると、その脇にソフトクリームのチラシが目に入る。ちょうど冷たいものを食べたかったので購入すると、トロ~リと香り高い黒い蜜のようなものをお姉さんがかけてくれた。チラシをよく見ると、ソフトクリームには酒蔵の甘酒を練り込み、黒蜜風味の10年熟成本みりんで仕上げたと書いてある。酒蔵とみりん蔵のコラボ商品だ。

ソフトクリーム

一口頬張ると、みりんの後に甘酒の風味が広がるが、そのみりんのなんと甘いこと!思わずお姉さんにみりんを舐めさせて貰えないか尋ねると「本当はダメなんですけどね(苦笑)」と小さなスプーンにひと匙くれた。

「(これは!!!)」

思わず「これいくらですか?」と聞くと、近くのみりん蔵から仕入れているが直売所では扱っていないとのこと。めげずに「どこで買えますか?」と聞くと、一般の店では売っていないようで、みりんの蔵元に聞きたくとも本日は休業らしい。なんと残念なことか……

帰宅後も諦めきれずにググってみると、みりん蔵「川石本家酒類」のホームページから注文できることがわかり、すぐにポチった。

それから約1か月。たまに、食後や風呂上がりにアイスなどにかけて食べているが、もうすぐ1本無くなりそうである。蛇足であるが、川石本家酒類は、灘菊酒造よりも古く1863年(文久3年)から続く老舗で、しかもその本家だった。

テキスト:斉藤憲仁

アイポイント代表/デザイナー。美大卒業後、デザイン会社に就職。地域計画会社、IT開発会社を経て、2002年にデザイン事務所「アイポイント」開設。 三鷹SOHO倶楽部代表、三鷹身の丈起業塾講師、武蔵野大学非常勤講師。

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