
一日も、一年も、一生も。
私たちの生きる時間は、大きさも色もさまざまな巡りで溢れています。
ひとつの巡りを終えたら、次のひと巡りへ。
ひとつの巡りの中で、小さな巡りがいくつも起こっていたり。
巡りはくり返し、重なりあいながら、人生は満ちていくのでしょう。
これは、沖縄県竹富島在住の写真家・水野暁子(みずのあきこ)と、
神奈川県の西湘地域を拠点とする文筆家/映像作家・関根愛(せきねめぐみ)による
往復書簡『あきことめぐみの、旅のひとめぐり』。
旅の途上で出会う人びと、風景、すてきなもの、時間とのさまざまな巡りあいを、
言葉と写真を通してささやかに伝え合います。
めぐみさんへ
2026年、新年を迎え、めぐみさんは、どのような時間を送っていますか?私は、ずっと苦手意識を持って避けていた「人前で話す」という試みに挑戦したり、普段なら話すチャンスがない人との出会いを大切にしたりして、経験と視野を広げられる年にしていきたいと思っています。また次回お会いした時に、語り合えたら嬉しいです。
今回の「旅のひとめぐり」では、昨年の秋に高校生の娘と二人で京都と奈良を旅したことを書こうと思います。

娘が幼い頃から、「プレゼントは物ではなく体験」を贈るようにしてきた。例えば、6歳のお誕生日には、海遊びを贈り、海ガイドをしてくれる島のお兄さんにお願いしてサバニ(沖縄で古くから使われてきた伝統的な木造船)を貸し切り、娘を含む5、6名の子どもたちが半日に渡ってサバニクルーズを楽しんだ。9歳のときには、台湾への旅を贈り、夜市で美味しいものを一緒に食べ歩き、古い町並みの中にある日本統治時代に建てられた洋館でお茶会をした。少し背伸びをしたい年齢の頃には、お友だちを誘ってリゾートホテルでのお泊まりを贈り、ナイトプール脇のバーでカクテルに見立てたジュースを注文して飲んでみたりした。どれも物質的には残らないけれど、心や身体に記憶として刻まれる体験になったら良いなという思いで贈った。

昨年の秋は、16歳になった娘の誕生日に合わせて、京都と奈良への旅を贈った。娘にとっては初めての京都だった。京都には、娘の幼なじみがいる。保育所の頃から、小学4年生まで一緒だったA君は、お姉さんの高校進学に合わせて家族で島から京都に移り住み暮らしている。

約5年ぶりに再会するA君は、身長も伸びて、すらっとした好青年に成長していた。鴨川沿いを並んで歩く娘とA君、ふたりの後ろ姿を見ながら、5年という時が経っても、難なくその時間という壁を軽やかに飛び越えられるふたりが誇らしく、島で育ったからこそ育むことができた関係性なのではないかと思った。


この日は、A君の大学生のお姉さんが先頭に立ち、京都を案内してくれた。嵐山を歩いたり、お抹茶と和菓子で一服したり、鴨川沿いを歩いたりして、最後は夜の祇園の街を散策してバス停で手を振り合ってお別れした。
その日の晩、ホテルに戻り「A君とふたりで並んで歩いていたとき、何話してたの?」と聞くと、「お互いの好きな人のこと」と軽やかな口調で返ってきた。春先の爽やかな風がふっと頰をかすめたときのような、清々しく心地よい喜びを覚えた。


今回の旅で、娘にプレゼントしたかった体験のひとつに、奈良にある革細工の工房、Therese(テレーズ)を訪ね、オリジナルの革バッグを作ることがあった。
Thereseの夏山末世さんとは、私が暮らす八重山で出会った。末世さんは、数年前から、奈良と竹富島を行ったり来たりしながら暮らしている。竹富島では、祭事を司る神司を務める女性に声をかけられ、神司のお手伝いをしている。
(次のページに続く)
テキスト・写真:水野 暁子
School of Visual Arts (New York)を卒業後フリーランスの写真家として活動を開始。祖父の故郷沖縄を旅した後、八重山に暮らす人々と亜熱帯の自然に魅せられ竹富島に移り住む。雑誌やweb、書籍などで撮影や随筆活動に従事、また独自のプロジェクトや作品の制作、発表にも取り組んでいる。書籍に『八重山、光と風の栞をはさんで』。日本最南端の出版社、南山舎刊行の月刊誌『やいま』にて島の人々を撮影したシリーズ『南のひと』連載中。
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