伝統をアップデートするKUONの服づくり

ファッション業界ほど流行の移り変わりが早い世界はない。特に日本ではシーズン毎にトレンドが変わり、洋服を買い替えるのが当たり前と考える人も多い。大量生産・大量廃棄などの社会問題を抱えている。

一方、古くから続く伝統工芸の世界では、変化することに非常に慎重だ。何十年、何百年と変わらないものづくりを続けている。しかし世間の変化に取り残されるように、その伝統が途絶えてしまう産地も少なくない。

KUONは、そんな2つの世界に接点を生み出し洋服作りをしているファッションブランドだ。日本の伝統的な技術や素材を用いて作られた服は、TOKYO FASHION AWARDを受賞し海外のショップやバイヤーからも注目を集めている。

今回はKUON創業者・藤原さんとフラッグシップストアー店長の長谷川さんに、ブランドの思想やものづくりについてお話を伺った。

― まず最初にKUONのブランドコンセプトについて教えてください。

藤原）「新しいものは古くなるけれど、美しいものはいつまでも美しい」。ファッションはトレンドとは切り離せませんが、一方で物質的な豊かさが飽和している時代になって、改めて心の豊かさとは何か？を考えました。

― 藤原さんがKUONをはじめたきっかけを教えてください。

藤原）ファッションをツールとしたソーシャルビジネスに興味があり、2010年頃にKUONの前身となるブランドをはじめました。とにかくファッションが好きで、自分の好きなファッションで世界と勝負をしたいという気持ちもあり、世界に出るためにKUONを立ち上げました。

― 古布や日本の伝統素材を取り入れるアイデアはどのようにして生まれましたか？

藤原）私がもともと、民藝（物というより思想）に関心がありブランドの構想段階から頭にありました。ボロをはじめて認識したのは小学生の頃に観た、黒澤明監督の『夢』という映画で、そこに出てきたのがきっかけだと思います。

KUONは2016年スタートのブランドなので、その時点で数多くの諸先輩方が海外でも活躍していました。コネも実績もないブランドがどうすれば世界に出ることができるのか？を考えた結果、海外のバイヤーが日本のブランドに期待することは、日本らしさ（文化的背景）やブランドのオリジナリティであると思い、それを分かりやすく、かつ普遍的に表現するために古布や伝統素材を取り入れたブランド構築をしました。

その時点で襤褸は頭に浮かんでいました。刺し子や裂き織りなど他の伝統技術については、東日本大震災の支援活動で岩手、宮城、福島に通っている中で、実際に現地で接点が増えていった影響もあります。

ただ、古布などをそのまま使うと“ほっこり”としたブランドになってしまうので、あくまで伝統を活かしながら、最新のファッションにアップデートするというところに時間をかけています。

またこの分野には手仕事が大きく関わるので、文化承継や雇用創出なども可能だと思い、当時はファッションブランドではサスティナブルやSDGsは注目されていませんでしたが、こちらも要素として取り入れました。

（次のページに続く）