種なしは農家さんの手間暇のおかげ
種なしぶどうのデラウェア。給食のときによく出ていた記憶があります。印象に残っているのは、種がないと思って食べた時にがりっと種があって、それ以降、勢いよく食べることができなくなった思い出。あさりの味噌汁に砂が残っていたときの感覚に似ています。あと、この種なしぶどうの中に種があった時の実は、ぜんぜん美味しくないんです。種なしの実は熟れていても、種がある実はまだ熟れていないから。
種なしぶどうは最初から種のない品種だと思っている方、いますよね? この種なしぶどう、元々ほとんどは種があります。栽培の過程で種なしにしているんです。食べやすい種なしにする為に、農家さんの大変な努力と手間が加わって作られているものなんです。
種なしにするために農家さんは2度にわたりぶどうに手を入れます。1度目は種なしにするための作業。ぶどうを種なしにするためには、自然界に存在するジベレリンという植物ホルモンを使います。ジベレリンの入ったコップに、ぶどうの花をひとつひとつ手で浸していきます。こうすることで、ぶどうの種は成長せずに果粒だけが大きくなるのです。
そして2度目も大切。種なしぶどうは、そのまま育てると、ぎゅうぎゅうに実が詰まった房になってしまいます。成長が促進されるんですね。そこで、果実が大きくなっていく過程で、一房ずつ粒をはさみで抜き取って間引いていくという大変手間がかかる作業をしています。だから種なしぶどうの中に種ありの実が残っていると、成長速度が違ってまだ熟れていないということもあるわけです。
植物ホルモンとは?
植物ホルモンという言葉で不安をもつ方もいるかもしれません。この植物ホルモンというものは、元々自然の状態の植物やぶどうの体内にあるものです。植物体内で作られて成長を調整する作用をもつ、生きてゆくために必要不可欠なものです。発芽して茎や葉を伸ばし、花を咲かせ、実をつけるのに必要なもの。私たちは、野菜、果物などを食べるときに、日常的にこれらの植物ホルモンを摂取しています。
このようにジベレリンは自然界にあるものであり、何十年も使用され続けている上に、国の機関による調査でも毒性がないとされています。またジベレリンの利用は、ぶどう以外にもミカンの落果防止や花卉の開花促進など多岐にわたっています。これらの実例により安全性が証明されているのです。
安全性の他にジベレリン処理を行うと味が落ちるといわれることがあります。しかし実際に糖分や酸の量を測ってみるとそう変わらないことが多く、場合によっては種がない方が濃厚な味になることもあります。
では種ありには何があるのか? それは香りではないかと私は感じています。ワインに使われるぶどうは種ありです。それは種によい香りが含まれているからである、という話を聞くと尚更そう思えてきます。
種なしぶどうの弱点
種ありぶどうの実を引っ張ると、種と軸をしっかりと結び付けている部品があります。種なしぶどうにはこれがなく、皮一枚で軸とつながっています。そのため熟度が上がると粒が軸から外れる脱粒が起こりやすくなります。脱粒は販売の際に古いというイメージを与えてしまいます。脱粒を避けるには熟度が上がる前に収穫するしかありません。市販のぶどうは輸送や販売の時間を確保するため為、早期に収穫してしまいがちなのが残念なところです。
それでも現在人気なのは種なしぶどう。その食べやすさの魅力から、今後も種なしぶどうの人気は衰えることなく、益々生産が増えていくと思います。シャインマスカットなどは、もともと種なし前提で作られた品種ですし、農家さんの手間はなくなることはなさそうです。でも食べるときに少し手間がかかるけど、ぶどうならではのコクのある香りや上品な酸味を味わえる種ありぶどうも魅力です。お好みに合わせて選んでみてください。
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