2025年4月4日。東映太秦映画村にていよいよ、 ”江戸時代式木工ろくろ実演コント”を披露する日がやってきた。
まことに急なことであったが、相方役を務めてくれることになった兼之助とは四日間の合宿でみっちり稽古を積んだ。この間、私たちは江戸の職人という役になりきるために荒っぽく威勢のいい ”べらんめぇ口調” でのみ生活をしてきた。(詳しくは前回の記事を参照されたし)
そうして迎えた本番当日。雪駄に股引、半纏羽織という町人スタイルに着付けてもらった私たちは、身も心も江戸っ子職人になった。
いきなり結果を申し上げると、私たちの演目は大変ご好評いただいた。弟子入り初日から遅刻してきた兼之助が、「てぇへんだ!てぇへんだ!」と雑踏の中を叫びながら舞台に駆け込んでくるという登場シーンが大当たり。何の騒ぎかとお客さんが集まり、一気に人だかりが出来たのである。
サポート担当のおすぎ(第十六話ご参照)からは、公演の度に知的なフィードバックと提案がもたらされた。それを元に修正を重ねる事で、集まったお客さんに最後まで楽しんでもらえるようにもなっていった。
お客さんにろくろ引きを体験してもらう際には、江戸式の「エイサ!ヨイサ!」という労働者の掛け声を聴衆の方々にもかけてもらうのだが、兼之助が乱舞しながら音頭を取ることで大盛り上がり。公演の度に、周囲は熱気を孕んだお祭り騒ぎとなった。
公演が成功するかという心配は初日で去り、むしろ心を砕いたのは一日三回の公演を三日間続けるモチベーションの維持。それと、兼之助へ目を光らせておくことだった。
なぜ目を光らせておく必要があったのか。それは、兼之助が映画村の方から ”日本酒飲み放題のお猪口” という禁断の果実を与えられてしまったからである。
彼の辞書に「自制」 という言葉が載っていない事は明白なのだが、まさかというか、やはり。初舞台を踏む前からお猪口をつまみ上げ、「そいじゃ、あっしは景気づけに一杯、、、」などと言って、控室となっている舞台の二階からそろりと出かけようとする。
「せめて一回目の公演が終わってからにしやがれ」と刃物を研ぎながら諫めるのだが、「一杯だけ!一杯だけでやんすから!」と懇願してくる。
「一杯だけだかんな!酔っぱらってセリフ飛ばしたら承知しねぇかんな!」と強く言い含めたのだが、後に二杯、三杯と立て続けにあおっていた事が判明。
そして後に見事セリフを飛ばし、腕を組んだまま 「う~ん、、、う~ん、、、」と唸り続けるという事態が発生。また後に、顔を真っ赤にしながら舞台に上がってよろけるという事態も発生。
またまた後に、酔い醒ましの水が災いして舞台前に強烈な尿意をもよおし、人知れずペットボトルに開放。私がボトルの中身に気づかず、兼之助の尿を持ち帰ってしまうという事態も発生。
極めつけはお客さんのろくろ回し体験で起こった。掛け声の音頭を取る際に、ほんの少しの言い間違いをした。それが偶然にも性的発言になってしまうという事態も発生。
そのお客さんがまた、キューティーハニーのように胸元がざっくり開いた服を着用したお姉様だったのである。視線を吸い寄せんばかりの深い谷が露わになっていたため、兼之助の本音が顔を覗かせたのかもしれない。
なお、言い間違えたのはたった一文字だけであり、私以外は誰も気づいてなかったと思われるので詳細記述はせずそっとしておく。
(次のページに続く)
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