手漉き和紙の魅力
手漉き和紙の魅力は、繊維が複雑に絡みあってうまれる味わい深い「線」の表情や、筆のくいつきの良さ、墨がじんわりと浸透し、えも言われぬ奥行きが広がるところである。これは、機械漉きの紙にはない手漉き和紙ならではの素晴らしさといえる。
多羅富來和紙では、なるべく地元産の原料を使いながら、昔ながらの製法を守り生産しているそうだ。中でも、満王さんのお気に入りの手漉き和紙は、ミツマタを100%使用した漂白をしていない和紙だ。
手漉き和紙の魅力は、繊維が複雑に絡みあってうまれる味わい深い「線」の表情や、筆のくいつきの良さ、墨がじんわりと浸透し、えも言われぬ奥行きが広がるところである。これは、機械漉きの紙にはない手漉き和紙ならではの素晴らしさといえる。
多羅富來和紙では、なるべく地元産の原料を使いながら、昔ながらの製法を守り生産しているそうだ。中でも、満王さんのお気に入りの手漉き和紙は、ミツマタを100%使用した漂白をしていない和紙だ。
ミツマタは、お札にも使用されている素材で、光沢があり滑らかな手触りが特徴である。多羅富來和紙は、地元の新宮産と徳島産のミツマタを使用している。
漂白されているミツマタの和紙は、シルクのように真っ白で美しい。しかし「薬品の漂白=紙を痛めている」状態であり、薬品での漂白は速くて便利だが、その分、和紙の耐久性は弱くなってしまうそうだ。
満王さんは、なるべく薬品で漂白せずに昔ながらの用法である日光を使って行うやり方を好んでいる。
切山産(四国中央市の里山)のガンピを100%使用した和紙も見せていただいた。ガンピはミツマタのような光沢に加え、さらに強い耐久性を兼ね備えた非常に優秀な素材である。しかし、人工的な栽培が厳しいため、自生するものを採取しなければならないという難点がある。現在、四国中央市では、切山に自生しているものが確認されており、こちらの和紙に使用されているガンピも満王さんが現地で探して採ってきた貴重なものである。
ミツマタ100%やガンピ100%の和紙というのは、主に高級紙に分類される。一般的な半紙や和紙については、マニラ麻、木材パルプなどの原料も使用しながら、用途にあわせて調製を変えて生産されているそうだ。
書道の世界では、自分の作品を手漉き和紙で残したいと思っている方が多い。満王さんは「和紙は1000年持つといわれるほど丈夫です。できるだけ自然に近い形で生産し、長持ちする良い紙を作っていきたい」とおっしゃっていた。
「実は、最初から手漉き和紙職人になろうと思っていたわけではない」という満王さん。始まりは、小学4年生の時に教室の片隅に置いてあった学級文庫「三国志」との出会いだったそうだ。そこから中国の歴史や文化に興味をもち、中学1年生の時に書道教室に通い始めた。
その時、魅了されたのが、手漉き和紙の半紙だった。今まで感じたことのない書き心地の良さにとても感銘を受けたそうだ。書道への情熱は冷めることなく、高校も書道部に入部。書道パフォーマンス甲子園などを経験していく中で、地元の製紙業とも深く関わることがあり、将来は紙に携わる仕事をしたいと思い始めたという。
そして、大学3年生の時、インターンシップで、地元の手漉き和紙の工房を訪れたことがきっかけとなり、職人を目指すようになった。
このインターンシップを通して、満王さんは、四国中央市にある手漉き和紙の工房がたった2軒しか残っていないことや、後継者もいない状況であるという現実を目の当たりにしたという。
「このままでは、ふるさとの技術が淘汰されてしまうかもしれない」と手漉き和紙の未来を懸念した満王さん。いろいろと考えた末、自分自身が手漉き和紙職人になればいいのだという結論に至った。
(次のページに続く)
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