今回は、この時期の旬の果物“いちご”を求めて、茨城県行方市の久保田農園を訪れました。ご両親の代から始まったいちご農園ですが、久保田さんが30歳の頃、お父様が亡くなりました。その時から、本格的にいちごづくりを継承し日々努力を積み重ね、現在の農園にまで成長させました。
久保田農園には、気温で自動開閉する装置のついた5連のビニールハウスが立ち並び、品種によって、ハウス内の温度が調整されています。ハウスの中は、夜間の温度が3℃以下にならないように暖房器具を使っていますが、なんと取材の前日に、この暖房器具が盗まれるという事件が発生したのです。他に被害はなかったのですか?と伺うと、いつも掛けている鍵を、この日はたまたま掛けていなかったそうで、機械だけが盗まれていた状態から、プロの仕業ではないかということ。なんともやり切れない気持ちを抱きながら、ビニールハウスを見学することとなりました。
この木箱の中には、なんと蜂が入っています。受粉させ、実をならせるという重要な役割を担った蜂です。去年訪れたトマトハウスでは、マルハナバチという普段はあまり見かけない種類の蜂を使っていましたが、ここにいたのは西洋ミツバチで、公園とかでよく見かける、あの見慣れた蜂です。いちごの花の蜜は、どんな味がするのだろうかと想像していましたが、採蜜するほどの蜜はとれないそうです。「いちごはそのまま食べるものだから、極力農薬は使いたくありません」という久保田さんの農園では、県の基準値の半分以下の農薬しか使っていません。いわゆる減農薬の栽培方法で育てています。しかも収穫時期の冬季では、いっさい農薬を使用していないため、ハウスの中は、元気な西洋ミツバチが飛び回っています。
ハウス栽培は、あっという間に病害虫がハウス全体に広がってしまうため、夏場までにいかに病害虫を抑えられるかが重要になってきます。その基盤となるのが、健康な土づくりと健康な苗づくりなのです。春の収穫が終わった後、苗を取り払い、健康な土作りに入ります。堆肥を漉き入れ、消毒のため土をシートで覆ってハウス内をサウナのように高温にします。そうして土を蘇らせて、次年度の植え付けに備えます。そして苗を植えた後は、日々の天候による換気や、昼夜の温度調節がとても大切になってくるのです。さらに品種によって、夜にハウスの設定温度を変更することもあるため、とても繊細な気配りが必要となってきます。低すぎると苗がダメになってしまうし、高すぎても上手く実を付けてくれないので、いちごから目を離すことなど一日たりとも出来ないのです。農家さんは、まさに生き物を扱っているといっても過言ではないほど、1年中、気を抜くことが出来ない職業です。どんなに大変でも、美味しくて安全なものを消費者の皆さまに届けたいという思いで、日々いちごの苗の状況を確認しながら栽培を続けています。
一般的な農園では、各地域の農協が推奨する品種を育てる傾向があるようですが、久保田農園は、推奨品種だけではなく、自らが美味しいと思ういちごを育てるという信念をもって取り組んでいます。数年前までは、「あかねっ娘」「アスカルビー」という品種を育てていましたが、現在はよりよいと思える品種にめぐり合ったため、品種を変更しました。それは、「やよいひめ」と「かおり野」です。やよいひめは、形が少し長めでスタイルがよく、果肉がピンク色で、酸味と甘さのバランスが絶妙にいい品種です。かおり野は、果肉は白色で酸味が少なく、さわやかな甘さです。また、独特の香りと変形しやすいという特徴をもっています。食べ比べるとお互いのよさがはっきりとわかるため、ぜひ食べ比べていただきたい。この小さくて柔らかいいちごを、手でひとつひとつ状態を確かめながら、丁寧に収穫していきます。収穫したいちごを入れていく車輪のついたカートはあるのですが、かがんだままの姿勢で慎重な収穫作業を続けていくのは、想像以上の辛さです。
減農薬いちご 2品種セット
やよいひめ&かおり野
農園主が本当においしいと思う2品種「やよいひめ」と「かおり野」を詰め合わせて産地直送いたします。それぞれの個性をぜひ食べ比べてみてください。
900g/3,200円
STOREで購入
いちごは毎年苗を植え替えるため、久保田農園ではさらにいい実がつくよう、常に品種改良されている苗作り農家さんから苗を購入しています。また久保田さん自身も、親株から子苗を増やし栽培しています。同じ品種の苗からでも、全く同じ形や味の実がなるわけではありません。苗も、よりいい実になりそうなものを選別していきますが、1年かけて実がなってみないと最終的な判断は出来ないのです。こうした時間と手間をかけて、よりいいものや美味しいものを作ろうと努力を積み重ねるのが、日本ならではの農家さんです。
先ほど選別して収穫したカートの中から、またひとつひとつ大きさと形を揃えて箱に詰め出荷していきます。まるで赤い宝石のような輝きを放っているいちごを食べてしまうのは惜しい気もしますが、この旬の味を存分に堪能すべく、ヘタの方から食べてください。いちごは先の部分の方が甘いので、食べ終わった後もいちごの余韻に浸れます。
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