クラウドファンディングに挑戦
そのようにして、あれよあれよとerakkoのデビュー商品である「おとも椀」の規格が決まっていった。ある日のお昼時、家でゴロゴロしていた私のスマートフォンがデザイナー氏からのメールを受信した。
「erakkoのデビューは、クラウドファンディングに挑戦してみてはどうでしょう?」
クラウドファンディングというのは、「ナイスアイデアはあるけど、実現させる金が無い。」という人のための取り組みではないのか? 私の場合、お金は無いもののナイスアイデアがもうカタチになってデビュー寸前ではないか。それに、今だから率直に申し上げると、「なんだかメンドウクサそうだなぁ、、、」と思ったのである。
だが私も30年近くの人生の中で、波風立たせないように体裁を整えようとする心を身に着けてしまっていた。穏便に断るもっともらしい「出来ない理由」を考える。しかし、困ったことにメンドウクサイ以外の理由が思いつかない。長考が続いて再び思考回路がショートしそうになったとき、私はひらめいた。
「そうだ!テキトーに申し込んで、クラウドファンディングの担当者にさっさと断られればいいんだ!」
そもそも私はクラウドファンディングの要件からは遠いパターンなのだ。きっと断られるだろう。そして、デザイナー氏に「申し込んでみたのですが、断られちゃいました(汗)」というメールを返信するのだ。こんなにも相手を納得させられる説明がいまだかつてあっただろうか。いや、ないと断言できる。
イラスト:SORRY.
和菓子好きイラストレーター。デザイン会社での経験を経て、現在はフリーランスとして活動中。ショップやラジオ番組のロゴデザイン、雑誌の挿絵などを制作。
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写真:其田有輝也
そうと決まれば、あとは実行に移すのみだ。有名クラウドファンディングサイトからチャチャッと申し込みを済ませる。
さぁ!早く、「誠に残念ではありますが、貴殿の今後の活躍をお祈りしています。」といった旨のメールを送ってよこすのだ!
それから30分ほどで、担当者からのメールを受信した。
「早速ですがクラウドファンディング準備に関する打ち合わせ日取りを、、、うんぬんかんぬん。」
なんと、テキトーにチャチャッと入力した申込みが通ってしまったらしい。
打ち合わせの当日、私は大阪のでっかいビルディングのかなり上の階を訪問した。
担当の方に、「僕はクラウドファンディング実行者に該当するんですか?」と聞いてみたところ、「リターン(返礼品)の製造が実現可能で、反社会勢力との関りが無ければ基本的にはナンデモオッケーです。」ということだった。
「erakkoさんの場合はリターンがすでに決まっているのでオッケー。企画としては、【先行販売】というカタチにシマショウ。」
なるほど、商売ならなんでもありというワケだ。
「じゃ、一通り説明はしますので、あとはこのマニュアル通りにクラウドファンディングのページ作ってネ。」という感じで帰された。そう、クラウドファンディングとは取組みの紹介から商品販売のページにいたるまで、すべての構成を自分で考えて作らなければならないのだ。
それからというもの、重い腰を上げてページ作りをしようとパソコンの電源を入れるも、「画面が立ち上がるまで、、、」と本に手を伸ばし、気づけば1時間以上たっている。
夜9時以降になると、「もはや本来の集中力は発揮できまい。能力は朝に開くものだ。」と自分を納得させて、すみやかに布団にすべり込む。朝は朝で、「運動して体を目覚めさせる」といってサイクリングに出かける。身も心もスッキリしたところでようやくパソコンに向かい電源ボタンを入れるも、「画面が起動するまで、、」と、またしても本に手を伸ばす。
そうやって自分を甘やかしたツケが終盤に回ってくるも、デザイナー氏の助けもあってどうにかクラウドファンディング開始日に公開が間に合った。
だが、駆け出し職人の真の苦しみはここから始まるのであった。
次回、クラウドファンディング開始編をお楽しみに!
第五話「手作り市と職人」を読む →
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erakko 森小屋のテーブル
そしてそして、「erakkoの新商品出します」と予告し続けること半年以上、「やるやる詐欺ではないか!」という声に耐え忍ぶ日々を私はついに越えた。
erakkoの"孤独も愛する"というコンセプトは、サッと一人で出かけて過ごすアウトドア時間を指すものだけではない。少年の心をくすぐる、秘密基地的な屋内空間で過ごす時間もまた、"孤独も愛する時間"なのである。
かねてより妄想を膨らませていた、大人の秘密基地ともいえる書斎のような空間で楽しむアイテムをついに作りあげた。その名も、"森小屋のテーブル"である。豊かな森で素材を調達し、そのまま森小屋で作ったような素材感やざっくり感を味わっていただけること間違いなしです。
薄暗がりの中でランタンのロウソクに火を入れ、ロビンソン・クルーソーになった気分をお楽しみください。本商品にランタンは付いてきませんが。
erakko 森小屋のテーブルを購入する
街中の暮らしでも、自然の中で過ごすような時間を感じられる道具を作りたいとの想いで作られたテーブル。
生産地:京都府
素材:クルミ、漆
仕上:拭き漆
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