柴田明

世界規格のお椀

一人でオリジナルブランド作りにいきづまっていた私は、次の一手を考えあぐねる棋士の気分であった。眉間にシワを寄せて食い入るように碁盤を見つめてはいるものの、思考回路はショート寸前。

それでも粘って長考を続けるあまり、口元はカールおじさんばりのうすらヒゲに覆われはじめていた(ような気がする)。

もっと早く誰かに相談していればよかったのだが、私の無駄な孤軍奮闘を月に代わってお仕置きしてくれる美少女戦士が現れることはなかった。

そして私は、自分の碁盤をちゃぶ台のごとくひっくり返した。前回ご紹介したデザイナー竹浪氏に協力を求めたのである。ことごとく人に助けを求めることを苦手としてきたこの私がである。気づけば私の口元を覆っていた”カールおじさんヒゲ”は消失していた。

テキスト:柴田明(erakko)

京都で漆と木工の仕事をしている脱サラ職人。父は職人歴50年のガンコ者。絶望的な経済状況の中でおもしろおかしく生きています。アウトドア漆器ブランド「erakko」を立上げ活動中。

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おとも椀

それからのブランド作りは破竹の勢いで進んだ。デザイナー氏の導きによってブランドコンセプトは明確になり、製品作りも具体性を増した。

”コッヘル(アウトドア用のお鍋)に収納できる”という部分においても、それまでは自分が旅で愛用していたお鍋のサイズに合わせていた。これも、「アウトドア用のガス缶(OD缶)が収納できるコッヘルのサイズに合わせたらどうですか?」という提案をうけた。

ドーム型をしたOD缶というのは、世界規格のサイズである。そして、そのOD缶を収納できるサイズのコッヘルというのも、多くのメーカーで製造されている。

つまり、それらにサイズを合わせたお椀を作れば、各メーカーのコッヘルに対応した世界規格の商品ができるというのだ。なんということだ。これがワールドワイドな視点というやつか。

次のページに続く)

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