彼女の車はサトウキビの葉がやふぁやふぁと風になびく道を進み、沖縄の南にある南城市へと向かった。そこには、沖縄の伝統的な紅型や型染め、また独自に編み出した染色を行っている工房「KATACHIKI」がある。
染色家の崎枝由美子(さきえだ ゆみこ)さんには、以前出身地である首里に工房を構えていた頃に、共通の知人を通じてお会いしたことがあった。
セレクトショップのバイヤーのお仕事もされている幸子さんは、以前からKATACHIKIの作品の仕入れに関わっていたこともあり、由美子さんとは知り合いで、工房に到着すると2人は軽やかに挨拶を交わしていた。
私たちは、由美子さんが染料を作ったり、布を染めていったりする作業の傍らに立ち、作業風景を見守るようにして撮影させてもらった。
「色挿し」の作業では、じわじわっと布に染料が染みてゆくその絶妙な度合いを熟知している由美子さんが、「これぐらい」という最良のところで筆を止める。それはまるで、染料や布だけでなく、その日の天気や湿度とも対話をしているように見えた。
由美子さんが淹れてくれたお茶を飲みながらお話を伺った。幸子さんは、私たちの少し後ろから時折カメラのシャッターを切りながらそれを聞いていた。
由美子さんは、暮らしの中にある自然や風景からインスピレーションを受けている。ブーゲンビリアやテッポウユリも、蝶や鳥も、花ブロックも(花ブロックとは、コンクリートブロックに空洞を作って柄をデザインした、沖縄生まれの建築素材)みんな暮らしの中にあるもので、由美子さんにとっては作品のデザインとして使用するモチーフだ。
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