「歳をとっても続けていければ良いなと思っています。小さな工房で小さなおあばちゃんが染めているみたいな」と言って笑う由美子さんはチャーミングで、私もこんな風に自分がおばあちゃんになった時のことを朗らかに想像できるようになりたいと思った。そしてめぐみさんならどんなおばあちゃんになるのかなと少し想像してみた。
由美子さんにお別れを言い、私たちは「お腹すいたね」と言い合いながら車を走らせ、八重瀬町にあるカフェへと向かった。幸子さんのお気に入りだと紹介してくれたカフェ「te」には、大きさの違う4つのテーブルが並び、窓からは午後の光が差し込んでいた。カウンターの向こう側で静かに手を動かしているお店の人がこちらに笑顔を向けて今日のメニューの紹介をしてくれた。
注文した「スパイスカレープレート」は、沖縄県産豚と豆とトマトのカレーで、スパイスの香りが食欲をそそり、私のお腹を鳴らした。
「取材はいつもひとりで行くから、勉強になった」と幸子さんは言い、「今度は私が石垣に行くので一緒に取材に行きましょう」と誘ってくれた。
食後にスパイスの効いたホットチャイをいただき、旅の終わりをしめくくった。
顔を見て励まそうと思っていたのに、こちらが背中をそっと撫でられながら「きっと大丈夫だよ」と励まされたような気分だった。
飛行機の窓の外には、ミルク色の雲の海が空にとけ込むように広がっていた。
みんなひとりだけど、ひとりじゃないね。
あきこより
水野 暁子
School of Visual Arts (New York)を卒業後フリーランスの写真家として活動を開始。祖父の故郷沖縄を旅した後、八重山に暮らす人々と亜熱帯の自然に魅せられ竹富島に移り住む。雑誌やweb、書籍などで撮影や随筆活動に従事、また独自のプロジェクトや作品の制作、発表にも取り組んでいる。書籍に『八重山、光と風の栞をはさんで』。日本最南端の出版社、南山舎刊行の月刊誌『やいま』にて島の人々を撮影したシリーズ『南のひと』連載中。
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