― KUONのアイコン的な存在の襤褸ジャケットが生まれた経緯を教えてください。
藤原)1stシーズンから展開しているアイテムです。メンズファッションにとって一番大切なのがテーラードジャケットだと考えています。どんなにクリエイティブなデザインであっても、テーラードジャケットの作れないブランドは世界では通用しないので、まず最初に自分たちが最高だと思い、かつ自分たちの最大の武器である襤褸を使用したテーラードジャケットを作りました。
テーラーで修行をし、パリコレでも人気のkolorでパタンナーとして活躍したKUONデザイナーの石橋が、何度も修正し、有名ブランドで技術指導をする日本屈指のテーラーに1着ずつ縫っていただいく最高のジャケットです。
同じように襤褸を使うブランドは増えましたが、KUONが国内外で広く支持されているのは、この美しいテーラードジャケットを作れる技術の影響も大きいと思います。
― 刺し子や裂き織りなど日本の伝統的な素材は、現代の素材とどんなところが違うのでしょうか?
藤原)“手間ひま”だと思います。生産性、素材性能などは現代の素材の方が上かもしれませんが、現代において一番貴重な”時間”が圧倒的に掛けられて作り出された素材は、現代の生産性を重視した高性能な機械では表現のできない、人の手のあたたかさ(今で言うともしかしたら、不良品)を含めた存在感があります。比喩ではなく実際に。
(写真上:刺し子と裂き織り 写真下:金継ぎをモチーフにしたジャケット)
― 確かに感じますね、あたたかさ。読者の皆さんもKUONのお店で実際に商品を触ってもらうと分かると思います。手間ひまかけるということを現在のファッションビジネスの世界で実現するのは大変だと思いますが、どのように折り合いをつけていますか?
藤原)手間ひまをそのまま全ての商品に投影するのではなく、それをアイデアとして使用しています。例えば金継ぎであれば、それをプリントで表現したり、異素材ミックスで表現したり。伝統技術や技法をアップデートするということは、そういうことだと思っています。ファッションは常に更新することも大切な要素だと思います。
また、襤褸や刺し子であれば松竹梅を用意しています。「本物の襤褸」→「襤褸の端切れをパッチワークした襤褸」→「デニム工場の端切れをパッチワークしたアップサイクル襤褸」といった順で、より多くのお客様にご満足いただける工夫(価格も生産性も)をしています。
また同時に、アップサイクルや工場の生地廃棄の課題解決にも取り組んでいます。
(次のページに続く)
1 2 3
COMMENTS