扇骨

高島の扇骨作りの今後

ほかの伝統工芸品と同じく、高島の扇骨も今後も作り続けていけるかどうか、心配事は少なくありません。

吹田さんによると、「1970年ごろならば、安曇川の北と南の両側合わせて、約50軒ぐらいの同業者がいた。一軒一軒にいる職人の人数も多かった」

高島の扇骨の生産は、それよりも前の1958年の約1,300万本がピークでした。しかし、クーラーの普及などで、その5年後には約500万本まで落ち込みます。一時は700万本台にまで盛り返したものの、中国産の扇骨や扇子に押されて生産が再び減り、今は厳しい状況になっています。同業者も20軒程度まで減り、いずれも経営規模は、家内工業レベルでしかありません。

その残っている同業者が一様に抱えているのが、高齢化問題と後継者問題です。ただ、吹田さんのところでは、息子さんがすでに後を継いでおり、このふたつの問題は解決しています。

原材料の入手先にも変化

材料の竹の入手も難しい状況になっています。どの同業者も地元産を使うことはなくなり、吹田さんも山陰や九州で切り出されたものを使っています。

安曇川の土手から竹林が消えたわけではありません。しかし、質が落ちているといいます。吹田さんは「竹の需要が減って、竹林を手入れする人がいなくなった。扇骨に使うには安曇川土手の今の竹は軟らかすぎる。安曇川が増水したときに竹林に流れ込む泥の影響だと思う」としています。

手をこまねいているわけではありません。10年ほど前、竹林の地主らとともに、「竹林整備組合」を作り、竹林を手入れし、再生に取り組んでいます。

包丁

職人の肌感覚が支える

1本の扇骨ができるまでには、多くの職人の手がかかっています。扇子までとなると、かかわってくる職人はさらに増えます。しかも、どの工程もほぼ手作業です。

たとえば、扇骨の形を整えるときも、「包丁」と呼ぶ刃物を使います。ほとんど、かんなの刃を取り出し、曲げただけのような形をしています。これを素手で持って、ちょっとずつ削りを掛けていきます。

吹田さんのいわれる「柔らかい風が吹く」も、おそらくは職人らの肌感覚による微妙な調整の結果、生み出されたものなのでしょう。

すいた扇子では、小学生の授業での見学を受け入れたり、扇子への絵付け教室を開いたりしています。直に扇骨職人の世界に触れたい人は、連絡をとってみてください。

協力:すいた扇子

〒520-1212
滋賀県高島市安曇川町西万木62
TEL 0740-32-1345

テキスト・写真:柳本学

活字媒体2社を経験し、京都では取材記者・写真部員として勤務する。現在は、関西・北陸が取材範囲のライター兼カメラマン。近隣の気になる手仕事を網羅中。

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