すいた扇子

高島の扇骨

扇子の生産地といえば、たいていは京都が挙げられます。繊細な伝統工芸品なので、イメージとしても矛盾はないでしょう。しかし、京都では、扇骨とよばれる土台部分に紙を貼り付けて完成品にしているだけでしかありません。実は、扇骨に注目すると、滋賀県高島市が国産品についてはほぼ独占しています。

高島で扇骨作りが始まったのは、350年ほど前だと考えられています。ただ、すでに伝統を守っているだけでは難しいようで、地元で完成品まで作るなどの変化も起こっています。

滋賀県扇子工業協同組合の理事長も務め上げ、職人としても60年近くの経験を持つ吹田政雄さん(すいた扇子社長)をお訪ねし、高島の扇骨についてお聞きしてきました。

硬くても柔らかくてもだめな扇骨

高島市は、東は琵琶湖に面し、西は比良山地が迫っています。「デパートの高島屋は、この高島ゆかりの人が創業したので、そう名前が付けられた」といったことで思い出される程度の農村地帯です。実はここが、手軽に涼が取れるだけではなく、さまざまな芸事の必需品である扇子には、なくてはならない土地なのです。

「ちゃんとした扇子であおぐと、柔らかい風が吹くんです。適当に作った扇子は、バタバタ、ガタガタとした風が顔に当たるだけです」と、吹田さんは言います。ポイントは、扇骨のしなりにあるそうです。「扇骨が硬すぎてもや柔らかすぎてもいけない」

扇子の構造は、土台となる竹の部分と、後から貼り合わせる紙の部分に大別されます。扇骨とは、この竹の部分を指し、紙の部分は扇面といいます。

団扇(うちわ)は中国などにもあるのに対し、扇子は日本独自のものです。誕生したのは平安初期で、広く使われるようになったのは江戸時代だったといわれています。その重要なパーツである扇骨は、かつては、京都や名古屋などでも作られていました。しかし、今では滋賀県高島市がほぼ独占しています。

扇子

農家の副業として始まる

高島で扇骨作りが始まったのも、江戸時代のようです。なぜ、高島で生産が盛んになったのかはよくわかっていません。ただ、徳川5代将軍・綱吉の時代に、高島市の中央を流れる安曇川の土手に竹が植えられ、この竹が扇骨に適していたことが理由のひとつだと考えられています。

扇骨作りは、農閑期である冬の副業として農家の間で広まりました。幕末には、名古屋から扇骨作りの最新の技術がもたらされ、同時に京都や大阪にも扇骨の販路が広がります。これで、いっそう生産が盛んになったようです。

今でも、扇骨の多くは京都に送られ、そこで扇面を貼って完成品となり、「京扇子」として売られています。

次のページに続く)

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