美味しく食べて、健やかに元気にすごしてほしいという、作り手の祈りや願い。食べることは生きることだけではなくそれ以上の意味を持っている気がしています。
郷土料理はただの「食」ではなく、そこに暮らす人の生活、土地、気候、文化など、様々な背景を知ることができるもの。ここでは、各地に根付いた郷土料理についてご紹介していきます。
今回は大分県の郷土料理「石垣もち」です。
大分県の郷土料理「石垣もち」
「石垣もち」はごろりと切ったさつまいもと小麦粉、水を混ぜ蒸したもの。名前に「もち」とつきますが、もち・もち米などは使用されていません。
大分県はかつては米作りに適さない台地が多かったそうですが、水路が整備されるようになってから小麦などの穀物作りが盛んになったそう。そこからこの土地には粉食文化が根付いていきます。
「石垣もち」もそんな背景から生まれ、冬から春にかけて農作業の合間に食べるための庶民のおやつとして大分県全域で親しまれてきました。
名前の由来は、さつまいものゴツゴツとした感じが石垣のようであるから「石垣もち」であるという説と、石垣の多い地区発祥であるからという二つの説があります。
「石垣もち」には「きりこみもち」「こねこみもち」など地域により様々な呼び方があり、芋の切り方や小麦粉の分量にも地域差があるそうです。
「石垣もち」の作り方
好みの大きさに切ったさつまいも、小麦粉、水を混ぜてこね、適当な大きさに丸めて蒸し器で蒸すのが一般的な作り方。
地域により小麦粉だけではなくベーキングパウダーを加えるレシピもあるそうですが、今回は一般的な「石垣もち」を再現するためにさつまいも・小麦粉・水のみで作りました。
とてもシンプルなレシピですが、コツは小麦粉とさつまいもを一緒に混ぜること。小麦粉を先にこねてしまうとさつまいもをいれても混ざりづらくなってしまうので、一緒に混ぜることが大切です。
今回は家に蒸し器がないので、フライパンと器と蓋で代用しています。10分ほど蒸したら完成です!
出来立ての「石垣もち」を食べると、ふんわりとさつまもの甘味と小麦粉の香りが口の中に広がりました。素朴で滋味豊富な味わいはどこか懐かしく、あたたかな気持ちになります。
大分県では「石垣もち」を家庭で作る機会は減っていますが、幼稚園や小学校などでは給食に登場しているそうです。
農作業の合間のおやつが、今では給食のデザートとして親しまれている。伝統の味がこうして消えずに形を変えて受け継がれていっているのを知ると、なんだかとても尊く美しいものを見た気がして思わずぐっときてしまいますね。
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