美味しく食べて、健やかに元気にすごしてほしいという、作り手の祈りや願い。食べることは生きることだけではなくそれ以上の意味を持っている気がしています。
郷土料理はただの「食」ではなく、そこに暮らす人の生活、土地、気候、文化など、様々な背景を知ることができるもの。ここでは、各地に根付いた郷土料理についてご紹介していきます。
今回は宮崎県の郷土料理「冷や汁」です。
宮崎県の郷土料理「冷や汁」
「冷や汁」は、古くから宮崎県の平野部を中心に食されてきた郷土料理で、アジなどの魚を焼いてほぐした身を、冷たいだし汁に混ぜてご飯にかけたものです。
夏に重労働を行う農民が、麦飯に味噌をのせて水をかけて食べていたものが元になっていると言われています。暑さで食欲がない時や忙しい農作業の合間、簡単に栄養をとることができる料理として受け継がれてきました。
近年は減ってきていますが、お盆などに親戚が集まった際に行う宴会で、締めの料理としても食されてきたそうです。食文化の情報が広まった現在では、県内だけではなく全国的にも知られている料理です。
冷や汁の作り方
冷や汁作りはだしをとるところから始まります。まず、鍋に水と昆布を入れ、30分程放置。30分経ったら沸騰寸前まで沸かして昆布を取り出し、火を止めて鰹節を入れます。
鰹節を入れたら中火で再加熱し、沸騰したら火を弱めてアクを取り除きましょう。3分ほど弱火で加熱したらこし器でこして粗熱をとり、冷蔵庫で冷やしておきます。
だし汁を冷やしている間に、アジの干物を魚焼きグリルで焼いていきます。こんがり焼けたら身をほぐしながら丁寧に骨を取り除きます。小骨もしっかり取っておくのが美味しい冷や汁作りのコツです。こちらもだし汁と同様に粗熱をとってから冷やしておきましょう。
薬味類の準備もしておきます。大葉は千切り、ミョウガは輪切りにし、キュウリはスライス。キュウリは少量の塩でもみ、水気を切っておくのがポイントです。白ゴマもすり鉢ですっておいてください。
薬味の用意ができたら冷やしただし汁に味噌を溶き、ほぐしたアジと薬味類、豆腐を崩してさっくりと全体を混ぜて、ごはんにかけて完成です!
アジの滋味深い味わい、すりゴマの香ばしさ、キュウリとミョウガの爽やかさ……。色々な風味とうま味を味噌を溶かしただし汁がうまくまとめていて、食欲のない時でもさらさらと食べることができそうです。
冷たく爽やかで栄養も豊富。暑気払いにぴったりな「冷や汁」、ぜひご自宅で試してみてください。
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