私の不義理によって「柴田明 被害者の会」の会員を名乗るようになったアツユキ青年は、工房移転の手伝いと草刈りをする代わり、自分を弟子として受け入れる事を提案した。
その条件を飲んだ結果、一年半以上も先延ばしにしていた田舎への木工房移転が2022年8月16日に決まった。
引っ越し当日はアツユキにも車を出してもらい、移転作業はあっという間に終わった。こうして漆工房のある京都市と、木工房となった南丹市の田舎小屋を片道1時間半かけて行ったり来たりする二拠点生活が始まった。今回は田舎小屋での働きぶりをご紹介しようと思う。
小屋での暮らしはシンプルである。テレビも無ければWi-Fiも設置していない。そのためモノづくりへの集中力が研ぎ澄まされ、次々と湧いてくるアイデアをカタチにして工芸家として飛躍の一途を辿るようになった。
この調子なら先月訪れた某美術工芸高校から正式に招待される日も近いという手応えを感じる。(詳細は第十二話へ)
という風になっていればよかったのだが、やはり現実は違う。
「今日はしっかり仕事をするぞ!」と気合を入れて早朝に京都市内を出発したとする。小屋に到着すると窓を開け掃除を済ませる。
「さぁ、一息ついたら仕事だ!」とソファに座り、あたり一面に広がる田畑を眺めた瞬間にはもう「のんびりいこうぜ、、、」と当初の気合いは跡形もなく霧散しているのだ。
そして気づけば1時間ほどが経過している。重い腰を上げるのは午前10時頃という事が往々にしてある。
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