優秀な育種親「清見オレンジ」
春の高級柑橘。今人気なのが、デコポンやせとか、はるみなど、味や食感の優れたおいしい柑橘類が増えてきました。これらは今まであった柑橘類の交配によって作り出された品種です。
これら最近の優れた品種の多くの片親にあたるみかんが、清見オレンジです。清見オレンジは、日本で初めて育成されたタンゴール(みかんとオレンジとの交雑品種の総称)です。こちらもまた、人間が交配によって作り出した果実ですが、最近話題の遺伝子組み換えやゲノム編集といったもので作られたわけではなく、長い月日をかけて奇跡的にできた品種なんです。オレンジのような芳香と、果汁たっぷりの果肉はまろやかな甘さが特徴で、温州みかんとオレンジの良いところが凝縮されています。
大きさは、みかんより一回り大きいくらいのサイズです。糖度が高く、ほどよい酸味があり、しかも香りはオレンジ。袋の皮は薄くそのまま食べることができます。外の皮はオレンジ色で、みかんよりもやや固め。種はほとんどありません。果汁の多いジューシーなみかんがお好きな方におすすめです。
開花から収穫までの期間が長く、じっくり時間をかけて、オレンジ系の香りとあふれる果汁が果肉に蓄えられます。皮に水分をとられ、果肉がパサつく素上がりはあまりおこりません。あまり貯蔵性は良くないけれど、食べられるうちは、とっても美味しいということです。
清見オレンジは、国の果樹試験場で宮川早生とトロビタオレンジを掛け合わせてできた品種だそうです。1949年から1963年までかかって初めて成ったと言われています。清見オレンジには種の中に胚が一つしか存在しないという特徴があります。そうでないと他品種との掛け合わせで新しい品種を作り出すのがとても大変なんです。そのため、育種親として優秀な清見が奇跡的に生まれたのは、本当にラッキーなことでした。これが近年新しく登録された多くの品種の母親となっている理由です。優れた子供を作り続けている親自身、その美味しさは健在で、今でも人気がある高級品種です。
室町時代からある「文旦」
こちらも、最近できた品種ではありません。古くは室町時代に日本にもたらされたとも言われている品種です。みずみずしい爽やかな風味が特徴。果実は大きく食べごたえがあります。外皮は分厚く、種もたくさん入っていますが、プリッとした食感でさっぱりした酸味・甘みで後口のすっきりした味が楽しめます。その名は文旦です。「ザボン」「ボンタン」などとも呼ばれています。古くからあるのにずっと高級果実の位置を保っているのは、食べた方に感動を与え続けているからでしょう。
収穫したては酸味がとても強いため、12月~2月にかけて収穫し、1ヶ月ほど貯蔵して追熟・減酸させてから出荷します。酸味がお好きな方は、3月初旬ごろの出始めのものを。酸味が苦手な方は4月に入ってからのものをおすすめします。また、酸味が強いと感じた場合、しばらく保存して減酸させてからお召し上がりいただくと、食べやすくなります。
ブリッモチッとした食感、じわじわと広がる甘さ、そして実の大きさは、食べた方に満足感をくれます。昔からある品種ですが、この存在感、高級感は他の柑橘を圧倒し続けています。
文旦の血を受け継ぐ「愛南ゴールド」
最後に文旦の血を受け継ぐみかん、愛南ゴールドを紹介します。
4月以降に食べられる遅い柑橘。 ジューシーであっさりとした味。大きさ、外観はグレープフルーツに似ていて、“和製グレープフルーツ”と言われることもありますが、 グレープフルーツのような苦味は少なく、さっぱりとした甘みがあります。
熊本県で1920年頃に偶然に発見された品種です。寒さに弱いので暖かい地方でのみ栽培されています。この柑橘は、実のおいしさを伝えるだけでなく、外観が悪いことも伝えておかないといけません。ちゃんと理由もあります。
5月に花が咲いてから、翌年5月の収穫開始まで。12か月以上、長いもので15か月もの間樹になったままという驚異の果物なんです!!
後の時期になればなるほど、外皮は雨風の影響を受けて傷ができたり黒点が増えたりして見た目は良くないものになっていきます。長い期間木にならしたままにしているので、有効な殺菌剤もまくことができません。(そのおかげでより安心できるということも言えますが)また気温が高くなってくると、一度は黄色に色づいていたものが少し緑に戻ってしまうことがあります。回青現象といいます。熟していないというわけではなく、中身も問題ありません。
愛媛県産 愛南ゴールド
初夏から夏にかけて収穫できる黄色くて大きなみかんです。フレッシュな香りとさっぱりとした甘みは、夏にもってこいの柑橘です。
<予約受付中!7月下旬までの販売予定>
愛南ゴールド 4kg(9~11玉)
PRICE:2,980円
STOREで購入
一般的な農園では、糖が高い3月から5月にかけて収穫し、低温貯蔵で減酸させて4月以降に販売するところもあります。樹への負担を考えて、5月の花の開花を迎える前に、前年の実をすべて収穫してしまうためです。
実をつけたまま花を咲かせることは、樹に大きな負担がかかります。負担がかかりすぎると木が弱ったり、翌年の実をつけなかったり。最悪の場合は木が枯れてしまいます。
しかし愛媛県の吉田農園では「樹成り」にこだわって愛南ゴールドを栽培しています。「樹成り栽培」は5月以降も実を木に成らせたまま完熟させ、糖酸比が高くなってから順次収穫・出荷する栽培方法です。樹勢が強い愛南ゴールドだからこそできる方法でもあります。
外皮は剥きやすいので手で剝いてもいいですし、グレープフルーツのように半分に切ってスプーンで掬うのもよしです。
夏の暑い時期に少し冷やしてからお召し上がりください。その爽やかな甘さと香りが癖になること間違いなしです。この果物は、栽培者によっておいしさの違いがはっきり出ます。だから美味しい果物なのに、一度同じ名前のあまり美味しくないものを食べてしまうと、見た目も伴って悪い印象をもたれている方もいます。
愛媛県は愛南町の名人・吉田さんは、樹成りを重視し、出荷近くまで木に成らせ、古木のおいしい果実を届けてくれます。愛南町は年間平均気温が17℃、年降水量が1,900mmを超える、温暖多雨な気候を活かした柑橘類(特に春先以降に収穫される晩柑類)の産地です。全国生産量の約半分を占める全国一の産地となっています。
新しい品種は、人間の好みに合わせて、甘味だったり食感だったりを強調しようとしていきます。そういったものは最初食べた瞬間は美味しいと感じて、一時的に大ヒットしますが、飽きて一過性のものになることも多々。長い間食べ続けたり、この時期にまた食べたくなるという気持ちにさせてくれるのは、これら、昔からあったり食べ慣れたものだったりするんですね。
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