3日目 出雲民藝紙と出西窯
朝、旅館を出たときは強かった雨足が、八雲町に着く頃には小雨になっていた。聞いていた通り、集落一体の風景がすばらしい。山あいに赤い瓦屋根の家が寄り集まって、その合間を小さな川が流れている。出雲民藝紙は今も昔と変わらぬ環境の中で作られている。
出雲民藝紙は、島根県工業試験場紙業部で紙すきの技を磨いた安部榮四郎が、松江を訪れた民藝運動のメンバーと出会い、彼らと切磋琢磨する中で生まれた。原料の持つ特色を活かして作られる和紙は、他のどの和紙とも違い、色彩豊かで非常に独創的。現在は榮四郎のお孫さんが、その技術を伝承している。
出雲民藝紙は「流し漉き」という方法で作られる。桁という木枠にすのこを敷いて紙料液を組み込み、桁を揺すりながら液を落として厚さを均一にしていく。
出雲民藝紙は他の和紙と比べて桁を動かす回数が少ないそうだ。ゆっくりと数回桁を振った後、動きを止めて静かに液を落とす。その分、厚さの調整は難しくなる。季節や紙の色によって練りの具合が変わる。毎日違う条件の中で均一な厚さに仕上げるには熟練が必要だろう。
和紙の原料の三椏は工房の傍を流れる清流で汚れを落とす。洗った原料は吹きさらしの小屋の中にある五右衛門風呂のような大釜でやわらかくなるまで煮る。紙を漉いた後、原料が三椏の場合は、熱した鉄板に貼り付けて乾燥させる。最近になって鉄板が錆びてしまい、ステンレスのものに交換されたが、中身は昔のまま薪炊きだ。原料が雁皮の場合は、襖の様な板に貼って天日乾燥する。
実は今回、出雲を案内してくれた豊田さんは、出雲民藝紙を使ったカレンダーを作っている。和紙を漉くところから勉強し、自分でデザインから製造まで手がけている。TABITOTE STOREで販売していますので、ぜひご覧ください。本当に素晴らしいプロダクトです。
出雲民藝紙カレンダー
島根県の伝統工芸品「出雲民藝紙」を使用した暦(カレンダー)です。ご自宅や職場で出雲の穏やかな空気を感じられます。
STOREで購入
午後は車ですこし走って出西窯へ向かった。このエリアは島根で近年最も注目を集めているスポットといっていいだろう。ショップに隣接する工房はオープンファクトリーになっていて、職人たちの仕事を目の前で見学することができる。
2018年には工房の隣にカフェ&ベーカリーが開店して話題になった。そして、2019年には洋服や雑貨をあつかうセレクトショップもオープン。出西窯の顧客とも親和性が高そうな、品質が良くてシンプルなデザインのアイテムが揃っている。このエリアだけ、島根とは思えない(失礼!)モダンな雰囲気が漂っていた。
(次のページ「4日目 舩木窯と出雲民藝館」に続く)
出西窯
島根県出雲市斐川町出西3368
山陰本線直江駅から徒歩40分
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