
温室で育てられるメロンは、食べ頃になると、香料の原料としても使われる麝香――英名をマスク(musk)という――のような上品な香りがすることから、マスクメロンと呼ばれています。
今回訪れたのは、そんなマスクメロンを作っている遠州磐田の農園です。温暖な気候と肥沃な土地、そして清流に恵まれた環境の中にあります。農園から歩いて行ける遠州灘では、海岸線沿いに砂浜が広がり、心地よい海風を感じることができます。
お話をうかがったのは、大正時代から続く農園で、代々メロン作りにいそしむ鈴木さん。特徴ある粘土質の土に目を付けた鈴木さんの祖父が、この場所でメロン栽培をはじめました。


マスクメロンは、その苗が吸いあげる水分によって甘さや育ちが変わります。そのため地面に直接植えるのではなく、地面から浮かせて作られた”土のベッド”に苗を植え、育てていきます。こうすることで、苗に行き渡る水分量を人間の手で調節することができるのです。
この土のベッドに使われるのは、近くにある田んぼの土。1年に1、2度、わざわざ田んぼから土を運んできて、ベッドの土を入れ替えます。土の入れ替え作業を行わない場合でも、すべての収穫が終わった後に、蒸気土壌消毒を行い雑菌を排除。1~2時間かけて土をリフレッシュさせます。
メロンは積算温度(生育日数の毎日の平均気温を積算した値)を知ることで、だいたいの収穫日が予測できます。季節問わず、ハウス内の温度はほぼ一定に調節されているため、通常、苗から育てた実を収穫するまでに、大体3ヶ月程度かかる見込みです。
温室の中で1年を通して作られるマスクメロンですが、同じ種類の苗を繰り返し使用するわけではなく、1回作るごとに性質の異なるものへと変えていきます。ハウスの中は温度調節はできても、季節によって変わる日差しの強さを調節することはできません。そこで、それぞれの季節に合った苗に変えて栽培しているのです。



基本的には、農業組合に頼んでそのときに欲しい種を作ってもらい、それを農家さん側で育てるのが、一般的なマスクメロンの栽培。しかし鈴木さんの場合は、自家採種という方法で自ら種を作り、苗へと育てています。
ではどうやって性質の違う種を作るのか。同じ母体の樹に受粉させる、花粉の組み合わせを変えて作ります。そうすると組み合わせに応じて、1代限りの性格を有する苗が発芽。この花粉の組み合わせを考えて、翌年の季節ごとの種を作っているのです。
こうして種から作り、それを発芽させ、1苗に1玉の立派なメロンを作っていく。メロン栽培の中で培ってきた、長年の経験と自信を持ち合わせた鈴木さんだからこそ、毎年違う性質の種を作れるわけですね。この経験と自信こそが、立派なマスクメロンを作るためには欠かせない要素といえます。
最低25度に保たれたハウスの中は、冬でももちろん温室状態。上着を着て、ちょっと動いただけでも汗が出てきます。そんなハウス内の温度に関しては、コンピュータによって窓の開閉を制御するなど、機械が調節しています。しかし温度以上にマスクメロンの栽培において最重なのは、徹底した水の管理。甘いメロンができるかどうかは、水の管理にかかっているといっても過言ではありません。
さらに毎日の観察を少しでも怠ってしまうと、小さな害虫や葉の病気などが、温室内という狭い空間で一気に広がってしまいます。こういった害虫や病気は、早期発見がなによりも大切です。



身長の高い子、低い子、人の成長にも個人差があるように、苗の成長にも個体差があります。苗の成長は当然、実るマスクメロンの大きさにも影響を及ぼします。そこで、均等な大きさになるよう育てあげるためにも、人の手によって、苗の時点から背の高さを調節します。
収穫前になると、マスクメロンの表面が変色しないよう、陽避けをかぶせて鋭い日差しから実を守ります。温室という暑い環境の中で、毎日手を抜くことなく根気強く成長を見守り続ける――それが農家さんの役目です。
そして、1つの苗から1玉のマスクメロンの出来上がり。1玉1玉に愛情をそそいで作り上げられたマスクメロン。上品な甘さや香り、とろけるような食感は、他の果物では決して味わうことのできない代物です。
収穫した後のマスクメロンは、しばらく置いて追熟させるのが基本。商品として手元に届いた時点でも、まだ十分に完熟していないものがほとんどです。直射日光を避け、できれば20度~25度くらいの温度で保存するのが理想的で、実についたツルがしおれたり、緑色の皮がやや黄色みがかってきたら、ようやく食べ頃の合図です。
大切な方への贈り物や、自分へのちょっとしたご褒美日として、ぜひ召し上がってみてください。
名人・鈴木さんのマスクメロン
温暖な気候と肥沃な土地、そして清流に恵まれた遠州磐田。磐田の代表「メロックス磐田」を栽培しているメロン作り名人・鈴木さんによる逸品です。
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静岡県産マスクメロン(クラウン)
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