大人気の果物ギフト
「切ったり剝いたりの手間がない」「甘酸っぱい」「柔らかい」「見た目が可愛い」。現代の果物ギフトの要素をすべて満たしているのが苺、そして今の時期ならさくらんぼです。6月下旬から7月上旬の僅かな期間、この赤い宝石であふれている場所があります。全国のさくらんぼの収穫量の80%を超える山形県です。
全国に向けて各農園から家族総出で収穫して発送します。普段は別の仕事をしている家族も、この時期はさくらんぼ詰めを手伝います。その忙しい中、部外者である私は農園さんのひんしゅくをかいながらも、毎年お付き合いのある、さくらんぼ農園を何件か訪ねています。
山形市のこちらの農園さんは佐藤錦の収穫がまさに終わったばかり。終わったはずなのに、立派な実をつけている木があります。さくらんぼの木はほとんどの品種が自家受粉をしません。こちらの木は受粉の為の木。品種はナポレオンです。このまま、ならせっぱなしで終わりにしてしまうそうです。
佐藤錦という品種は、大正期に佐藤栄助氏が育成した品種。親がナポレオンと黄玉なんですね。だから受粉用の木として相性が良いらしいんです。最近市場では見かけないナポレオンですが、元来食用として売られていたし、缶詰用として重宝されていました。酸味があり、パリッとしていて大粒だし。昨今の甘すぎるさくらんぼに飽きてきた人向けに販売したら売れそうな気がします。
さくらんぼの選別
こちらは佐藤錦発祥の地、東根市の農園さん。収穫したさくらんぼの選別をしていました。摘果の程度や育て方により差はありますが、成木になるさくらんぼの実は、1本で5千個以上収穫できます。ただし、そこから商品にできるものを選別していきます。収穫時に選り分け、大きさで選別、傷や色で選別して、残りは残念ながら廃棄されてしまいます。とてもデリケートな果物なので、配送中に傷んでしまうのを避けるためにも、このような選別は重要なのです。
夜ふと立ち寄った居酒屋のカウンター。常連のお客さんが隣で飲んでいました。地方を旅すると、地元の方とお話しをするのはとても楽しいこと。「何飲んでるんですか?」と尋ねると、地酒の日本酒とのこと。お酒の話しで一通り盛り上がると、仕事の話しに。「私は、各地の美味しい食べ物を探して、産直で届ける仕事してます」と言うと、「じゃあここ山形ならさくらんぼだね」「うちの実家はさくらんぼ農園だよ」「うちのは一番だよ」と話してくれました。
彼はさくらんぼ農園の三代目。普段は会社員で、この時期だけ実家のさくらんぼ配送を手伝っているらしい。「最近のお勧めは紅秀峰かな。うちのは紅というよりもっと濃いんだ。一度見せてあげるよ」と言われましたので、次の日農園を尋ねることにしました。
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