かつては二十世紀梨、今はル・レクチェ
日本の洋梨で一番有名なのはラ・フランスでしょう。山形県が一番の生産地で、その武骨な恰好からは想像できないほどクリーミーな果肉と独特の芳香を持つおいしい果物です。
開花から収穫までの期間が長く、栽培も難しい為、母国フランスではほとんど栽培されていないと聞きます。生食の味を追求する日本だからこそ栽培が広まった果物です。
ラ・フランスよりもさらに見た目を重視される品種で、傷が付きやすくA品を作るのが難しい洋梨がル・レクチェです。こちらの果肉は繊細なメルティング質で滑らか、ラ・フランスとは違った芳香の洋梨です。ラ・フランスが女王様で、ル・レクチェは貴婦人と呼ばれることもあります。
このル・レクチェを約30件の農家さんが耕作している場所が新潟にあります。この集落はかつて二十世紀梨を主に育てていましたが、ル・レクチェに出会って、その魅力に取りつかれ、今ではル・レクチェの有名な生産地となりました。
今年は新潟の果実が豊作
こちらの樹齢30年ほどの大きな木には、1000玉以上のル・レクチェが実をつけています。農園主の捧さん曰く、今年は豊作で去年の1.5倍位だそうです。柑橘類ほど表と裏の年があるわけではないですが、今年は良く成っているらしいです。
「きっと来年は少ないよ。今年の実の数を減らしてやればいいのかもしれないけれど、木が成りたがっているのだから成らせてあげるさ」
自然に任せるのが捧さんの流儀。こちらの農園は周りの他の農園より、実が大きく育ちます。肌に傷をつけないように収穫まで袋に入れていますが、実が大きくなりすぎるため、通常の大きさの袋では破けてしまうため、ふた回り大きな袋を特注しているそうです。それでも袋はみんなパンパン。きっと育て方に奥義があるに違いありません。教えてくれるはずもないですが。
追熟しないと美味しくない洋梨
収穫の時期は10月下旬。木になっている実はまだ青く、食べてもガリガリと食感が悪いし甘くない。その昔、食べたらまずかったので捨てておいたら、数週間後、良い香りがしてきて、食べてみたらその美味しさに驚いたという話が残っています。
ル・レクチェはその姿、形、傷の有無も商品の評価になってしまいます。なので、収穫の時に袋から出して初めて、商品価値が分かる代物。そして収穫後は蔵にて保管し追熟を促します。時には暖房をつけて追熟を促進させたりもします。この追熟作業がなかなか難しいのです。毎日毎日、梨の表情を見ながら、約1ヶ月間にらめっこして出荷時期を見極めてゆきます。
追熟とは、デンプン質を果糖やブドウ糖に変える作業。ペクチンがゲル化することによって、甘さと食感の滑らかさが増した状態です。ラ・フランスは熟しても緑のままですが、ル・レクチェはバナナのようなイエローに変化するので、より分かりやすいかもしれません。
新潟県産 ル・レクチェ
洋梨の中でも栽培が非常に難しく、生産量が少ない貴重品種。果肉は緻密でとろみがあり、上品な芳香が漂います。糖度が高いうえに酸味とコクがあり、果汁の多さも魅力です。
<販売時期:11月下旬~12月上旬>
ル・レクチェ 2kg(6玉前後)
PRICE:3,580円
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来年の収穫に向けて準備
収穫が終わると樹に養分を蓄えさせて剪定。
梨は樹勢が強い木です。上へ上へと伸びたがります。また、もうすでに来年の花芽もしていて、この数から来年の収穫量もだいたい予想がつくそうです。収穫が終わったら木に栄養を蓄えてから、上に伸びた枝を切ってゆきます。
また果樹園の中には、まだ苗木という感じの若い木があちこちにあります。捧さんに聞いてみると、色々な新品種の梨の木だそうです。聞いたことが無い名前の梨です。捧さんは、毎年和梨の品種を変えています。
「おいしい梨の方がいいでしょ。新しい梨は実際に育てて食べてみないと分からないからね」
試験場で美味しく成っても、この土地で美味しく成るとは限らない。実際にル・レクチェは誕生したフランスでは、現在作られていません。栽培が難しく、あまり美味しくできなかったからと聞きます。
ところが日本の新潟加茂では、この上なく美味しく作ることができました。洋梨に関しては、ル・レクチェ以上のものに巡り会えていないようで、他の品種を作る気はないと断言するほど自信の品種です。
こうして農家さんは、休むことなく収穫が終わったら、次の年の収穫に向けて準備を始めます。
今年は和梨の甘太という梨を育ててみると、とっても甘く出来ました。今年の最高糖度は、17.8度を記録しています。ちょっとまだらな表情が特徴の見た目ですが、果肉は柔らかく食味が優れています。来年から販売できると思いますので、お楽しみに。
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