桃源郷の仙果といわれた桃

世界の多種多様な桃

同じ元素からできているのに性質が異なる物質があります。同素体といわれるもので、たとえば石炭とダイアモンドが同じ炭素でできてるなんて不思議ですよね。

果物でも同じようなことがあります。

その一つが桃です。同じ桃なのに、品種や産地によっても違いが出てきます。桃は非常にデリケートな果物なので、日本では山盛りにされているのなんて見たことないですよね。しかし海外の市場では平気で山積み。皮も実もかっちり硬いからできるのです。日本の桃は皮も実も柔らかいので、こんな積み方は絶対にできません。

中国の蟠桃

上の写真は蟠桃（ばんとう）といわれる中国の桃です。つぶれたような変な形をしています。西遊記に出てくる食べると仙人になれるという桃がこの蟠桃です。

桃の原産地は、中国だといわれています。2500年も前から栽培されていたそうです。誕生したての頃は、毛毛（モモ）とも呼ばれていて、硬い果肉の表面がたくさんの毛で覆われていました。その美味しさとすばらしい香りから、桃はただの果物ではなく、桃源郷の不老不死の仙果だと考えられていました。

中国で誕生した桃は、シルクロードをたどり西域へ出て、ペルシャへと伝わっていきました。1世紀頃には古代オリエント一帯とギリシャ、ローマにも伝えられました。17世紀にはアメリカ大陸にまで来たといわれています。中国からヨーロッパへと伝わった桃は品種改良が重ねられ、果肉が黄色く変化していきました。

独自の進化をする日本の桃

さらに日本での、桃の品種改良はものすごいです。いかにおいしくするかを追求し続け、独自の改良の末、現在のような美味しい桃たちが生まれました。桃の皮、果肉ともに様々な品種があり、産地によっての特徴もあります。品種改良を続けることで、さらに新しい品種が次々と登場しているのです。

日本の桃は熟すと柔らかくて甘ーいのですが、皮も薄ーく、果肉も柔らかくなってしまうものが多く、山積みなんてできません。果物のなかでも、もっともデリケートに扱わないといけないものの一つです。

店頭で売ってるものは、早めに収穫して熟れてゆくまでの数日間を待つもの。ですから、本当においしい日本の桃を味わうためには産地直送です。産地から送るものが美味しいのは、そこが違います。6～7玉くらいの食べきりの量を農家さんが見極めて、一番おいしい食べ頃に送ってくれます。

山梨 白鳳

山梨白鳳は白い色の品種ですが、皮の色はどちらかといえばピンク色に近いかもしれません。肉質は緻密で繊維が少なく、果汁がとても多い桃です。酸味は少なく、ジューシーで甘い品種になります。農家さんが気をつけているのは、冬場に行う畑の土作り。藁などの有機質堆肥を土壌に切り込み、肥沃な土を作って、除草剤などを使わない減農薬農法を行っています。土自身に力を蓄えさせることが、おいしい桃を実らせるのには大変重要だからです。一年間を通した作物に対する愛情と、長年培れた経験と実績の証がつまった桃です。

岡山 白鳳

岡山白鳳は、肌が白く透けるよう。これは袋掛け栽培によって日光を当てないまま収穫されるためです。上品な香りとたっぷりの果汁がおいしい桃です。農家の三谷さんは、栽培が特に難しいこの白鳳を減農薬で特別栽培しています。もともと害虫がつきやすい桃を敢えて減農薬で作るには、想像を超える大変な苦労を伴います。1本1本、木を見て回り病害虫から大切な桃を守ります。こだわって農薬を極力使わず、おいしい桃を育てている、数少ない農園です。とても基準の高い、岡山県有機栽培農産物の認証も受けています。

山梨 スイートネクタリン

表面にうぶ毛の無いスイートネクタリン。ネクタリンは椿桃（つばきもも）、光桃（ひかりもも）といった別名を持っています。ねっとりとした甘さは別格。桃と同じくらいの大玉で、果肉もしっかりしていて身崩れしにくく、酸味も甘味も十分にあるバランスのとれた美味しさです。

山梨 黄金桃

果肉も表皮も美しい黄色。こちらの黄金桃も袋掛け栽培によって日光を当てないまま収穫されます。肉質は白桃に近い食感で、ややしっかりとしていますが、とてもジューシーで甘味も強く、適度な酸味もあって全体として濃厚な美味しさが楽しめます。マンゴーを思わせるような感じです。有機質肥料の配合を数十年も前から少しずつ変えて試してきた長年のノウハウです。毎年、ノートに配合を記録して、独自の配合率を生み出したことで美味しい桃作りができています。