屋久島

映画『もののけ姫』の舞台のモデルになったといわれる屋久島の苔むす森。白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)という渓谷の中にある、この森を見たくて屋久島に行ってきました。この森は自然休養林になっており、林野庁が「人と森林とのふれあいの場」として設定したレクリエーションの森です。

屋久島は鹿児島県の大隅半島佐多岬、南南西約60kmの海上に位置する島。鹿児島港から高速艇で1時間50分、到着した島は海からすぐに山がそびえるような場所。手前の山の奥には雲に霞む2000メートル級の山々が並びます。

この日は台風が連続発生していた夏の週。その真っただ中の日でした。翌日のトレッキングの予定は台風が直撃するといわれており、あきらめ半分で島に上陸。突然の土砂降りかと思えば、陽の光がさしてきたりと、天気はころころ変わりました。台風の進路が多少それはじめ、風が大したことなくなった為、トレッキングは実行されることとなり一安心。名物料理のトビウオのから揚げを堪能して1日目を終了しました。

屋久島 苔むす森

屋久島は本土最南端・鹿児島県佐多岬の南南西約60kmに位置する島です。鹿児島港から高速艇に乗って1時間50分。白谷雲水峡の苔むす森までのトレッキングは、行き帰り半日ほどで楽しめます。

屋久島観光協会

白谷雲水峡
白谷雲水峡
白谷雲水峡

1ヵ月に35日雨が降るといわれる屋久島。トレッキングに必須の用具として用意したレインコートと休憩時の雨傘。当日、予想通り雨がすぐに降り出してきた為、レインコートを取り出し着ようとすると、ガイドさんに止められました。なぜかと聞くと、夏のトレッキングではレインコートは体の熱が籠ってしまうため、熱中症になりやすくなるのだとか。半袖に雨傘がよいとのことです。片手はふさがりますが、体は涼しく動きはとても楽でした。片手なので足元の滑りやすさが気になるところですが、道には石が敷かれている所が多くあり、この石を踏んで歩けば滑りません。屋久島の石は花崗岩で、雨や風で風化し易い為、表面がザラザラしているのです。ただし、木の根っこはとても滑るので決して雨の日は踏まないことです。

屋久杉

屋久杉と本土の杉は、スギ科スギ属という同じ種類の木です。通常、スギ科の仲間というと500年位が寿命といわれていますが、屋久島では樹齢が千年を超す杉のことを「屋久杉」といいます。千年以下の杉のことを「小杉」と呼んで、まだ若者といった扱いです。なんせ屋久島の環境で育つと3000年なんていう桁違いに長生きの屋久杉も存在しているのですから。

屋久杉と本土の杉の決定的に違う点は、屋久杉には普通の杉と比べて、6倍以上の樹脂分が含まれていることです。屋久島の山間部では、年間雨量が8000ミリ以上というもの凄い量の雨が降ります。そんな大量の雨が降る環境で、杉は腐らないように環境に適応し、樹脂分が非常に多い杉になっているのです。

自然のオブジェ自然のオブジェ

屋久島は1993年に世界文化遺産に日本で初の登録となり、屋久杉も特別天然記念物に指定され、伐採は全面的に禁止となりました。江戸時代に伐採された屋久杉の用途は、主に平木(屋根の材料)であった為、地上から1メートルほどのところで伐採され 、割れやすい木を選んで加工しやすい部分のみを利用しました。利用されなかった枝条や幹・根株は、林内に放置されました。

200~300年も経って、土の中にある枯れた屋久杉が、現在でも腐ることなく残っていることの不思議さ。苔を身にまとった自然のオブジェが至る所に出現します。このオブジェの芯になっているのは屋久杉です。生きている木にも当然のように苔が生えています。神秘さえ感じる緑の森の空気は清々しく、特に雨の森は苔たちもいきいきして見えます。深呼吸がとても贅沢です。

苔むす森苔むす森苔むす森苔むす森

到達した苔むす森は、視界全体が緑の世界。苔の種類も多数あります。見慣れている苔でも、この森では主役を張れる存在。いきいきとした苔の美しさは、この森だから感じることができました。

森の清らかさは、途中に何度か渡った沢の水を見るとより一層感じます。雨の後ですから、水量は通常より多いとは思いますが、急流を流れ落ちる沢には魚がいません。清らか過ぎて餌が無く、魚が生きていけないようです。

森の土にも極端に養分が少なく、木の成長も通常の何倍もかかってしまいます。清らかさと肥沃は同時には存在できないのですね。屋久杉がこれほど長寿である理由の一つが、この瘦せた土地です。屋久杉の年輪は、本州の杉に比べて極端に間隔が狭い。つまり、成長が極端に遅い。その為、緻密で堅く腐り難い材となっているのです。屋久杉の工芸品を見ても、その細かい年輪には驚きます。

屋久島の特産物は、農産物より海産物になります。サバ、トビウオ、あらかぶ、チレダイ。旅行の楽しみで地元料理を期待していましたが、トビウオの唐揚げくらいで他には巡り合うことができなかったのが唯一の心残りです。

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