抽象的なオーダーをガラスで表現する
Taiga Glassではタイガさんがデザインした作品と、オーダーメイドの作品の両方を販売している。
「例えば、オーダーメイドの作品で代表的なものはプロアドベンチャーレーサー田中陽希氏によるもの。こちらは、”田中陽希モデル”として、店頭のラインナップのひとつとしても販売させてもらっています。陽希からのオーダーは、”内から湧き出る闘志の赤、山々の織り成す色、青緑”をイメージしてつくってほしいとのことでした。この時は、頂いたイメージから作品づくりを行ったところ、一発で本人からオッケーをもらえました。
ただ、通常は、頂いたオーダーに対して、イメージを具現化するのが難しくて、結構お断りさせて頂くこともあります。」
田中陽希氏はみなかみの元ラフティングガイドで、タイガさんとは仕事現場で一緒になることもよくあった馴染みの仲。同じみなかみの景色を見て過ごし、田中氏の人柄をよくわかっていたことが作品づくりに影響したのかもしれない。
タイガさんは、抽象的なオーダーについては、お客さん本人の思うところをしっかりとガラスで表現できるよう具現化してから、本人が納得できる作品づくりを心掛けている。
美しさの裏にある地道な作業
煌びやかなボロシリケイトガラス作品は、実は、地道な作業が続き、数日以上を費やして作業しなければ完成しないものもある。長年作品づくりをしていても、色々な条件が重なり、作業途中に修復できない程のひび割れが発生し、今までの作業がすべて無駄になってしまうことも。
さっとは完成させることができない、忍耐が必要なボロシリケイトガラスづくりだが、タイガさんは毎日作業を続けることに、全く飽きを感じないという。
「ボロシリケイトガラスづくりは毎回新たな発見があります。もっとこうしたかったけど、できなかったなとか、もっとこうすればよかったなとか、こんなものをつくってみたいとか。集中してつくっているうちに時間が過ぎていきます。これまでつくってきて、飽きたなと感じることはないですね。」
ネパールでボロシリケイトガラスのパイプに魅了されて以来、その魅力に惹かれ続けているようだ。
作品たちは娘のようなもの
「売れていった商品はひとつひとつ、ほぼ覚えています。嫁に出した娘のようなもの。」
タイガさんが作品づくりで大切にしているのが、なるべく割れない作品をつくって長く可愛がってもらえるようにすること。これまで数々の作品を送り出していく中で、驚くべきことに、ほとんどの作品のことを覚えているのだそう。
「ずっと長く使ってくれている人は、ひもの交換や修理などを依頼してくれて、お店に作品が届くたびに、嫁に行った娘が帰ってきた気持ちになります。耐久性が高いといっても、やはりガラスなので割れてしまうこともあるのですが、できるだけ壊れにくくつくることを意識しています。」
長年数々の作品をつくってきたタイガさん。強面の風貌からは想像しにくいが、作品には、娘を溺愛するような思い入れを持って製作している。
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