せとか

自分が子供の頃を思い返してみると、柑橘類といえば、冬はみかん、夏は甘夏というイメージでした。たまに給食でネーブルが出てきたときなんかは、味をしっかりと噛みしめながら口にほおばったことを思い出します。

現在、フルーツ店なんかを見てみると、子供の頃と比べて、甘さ、香り、食感と実にさまざまな柑橘類が出回っています。どれもみな糖度が高く、小さい頃、わざわざ砂糖をかけて食べていた酸味の強い夏みかんのようなものは、いまとなっては見かける機会も少なくなりました。

生産者である農家さんたちは、数多く出回る柑橘類の中から毎年よりよい品種を探し出して木を植え替え、毎日のように土作りや、環境の整備に精を出しています。

果樹は植えてから、数年たたないと結果が出ないもの。その間、辛抱強く耐え、風雨をしのぎながら果樹たちを守らなければならないため、農家さんの苦労もひとしお。その分、たわわな実が農園をおおう様は、なにものにも代えがたい喜びがあるでしょう。

園主
選別
選果機

今回は普段あまり目にすることのない生産者側の想いを聞くべく、大正時代から続く静岡県の柑橘果樹園にやってまいりました。お話を聞いたのは、この果樹園の5代目園主の後藤さん。

静岡県南西部に位置する三方原台地のある山側と、起伏の少ない平野部から成るこの果樹園は、山側にある路地と、平野部にあるハウスの面積を合わせて2.2haにも及びます。かつては、お馴染みのみかんやネーブル、夏みかんなどを主に栽培していたそうですが、現在では、それにとどまらず、さまざまな品種の柑橘類を育てています。

お馴染みのみかんは、山側にある路地での栽培。三方原台地にある山の南東斜面が、みかん栽培には適しています。

例年12月中には収穫が終わってしまうみかん。2017年に収穫したみかんの在庫も、12月半ばには終了してしまったといいます。収穫したばかりの果樹には、みかんの実の影も形もありませんでした。そこで今回は、みかんの大きさを測る選果機と、重さを量る機械などを見せてもらいました。

「2017年はみかんの裏年(よく実らない年)でした。常緑樹であるみかんの木は、豊作の年とあまり実がならない年が交互にやってくるんです。2016年が大豊作だったので、今回は収穫量が見込めないことはもちろん予想していたんですが、それに加えて台風や長雨といった天候も響いてしまって…。例年の8割収穫できればいいと思っていたんですけど、その半分以下しかならない木もあって。本当に酷い年でした…」

このような、毎年目に見えないものに左右されながら生活されている農家さん。自分でコントロールできないことが多い分、ほんとうに苦労が絶えない職業です。

今度の冬は、木も休んだし普通にいけばきっと豊作でしょう。次の冬に乞うご期待!

不知火

年が明けると、今度は平地にある黄金柑、八朔、甘夏などの収穫が始まります。これらは平地にありますが、ハウス中ではなく路地での栽培。昔から栽培し続けている強い品種なので、みかんと違い、毎年安定した収穫量を確保できます。

八朔と甘夏は年明けすぐから収穫を開始し、時間を置くことで、だんだんと酸を抜いていきます。出荷時期は、だいたい4月~6月になるそうです。

取材当時、絶賛出荷中だったのが、ハウスの中で栽培されている『不知火(しらぬい)』というボコッと先が出た”デコ”が特徴の品種。

世間一般には『デコポン』という名称で広く知れ渡っていますが、JAを通じて出荷されたものにしかこの名称を使用してはならないという実情があるので、ここでは、不知火という品種名で呼びます。ポンカンと清見オレンジを親に持つ、香りも食感もとてもよい果実です。

皮はそこそこ厚めですが、手でむくことができます。薄皮ごと食べられるので、そのままほおばってもよし。口に入れた瞬間、ジューシーな実から甘さや香りが口いっぱいにふわっと広がっていきます。

ハウスの中で育てているのは、実が凍らない程度の温度に保てたり、風によって実が傷つくことを防げたり、また鳥などの動物から守ることができるためで、加温はほとんどしていないそうです。

それにしても、面白い形をしてますよね。この形の悪さや育てることが難しいといった理由から、最初は見捨てられた品種だったそう。また他の品種と比べると、酸味が強いといわれていたそうですが、収穫してから少し時間を置いておくと、その酸味もほどよく抜け、おいしくなるそうです。

不知火に限らず、柑橘類はある程度の時間をおくと、酸味が抜けて甘みが出てくるという特徴があります。もちろん時間をおき過ぎると味がぼけてしまうので、酸味と甘味のバランスがほどよくなるタイミングで、ぜひ食べてほしいです。

ちなみに、同じ親から生まれた品種に、『はるみ』というものがあります。こちらも甘くて香りがよく、ぷちぷちとした食感がくせになるとってもおいしい果実。同じ親から生まれた『はるみ』ですが、なぜかこちらにはほぼ”デコ”がありません。味はさして違いはないのに、面白いもので、変な形の方が全国的に有名になってしまったんですね。まさに見せ方、売り方の勝利といえます。

不知火(しらぬい) 静岡県産

デコが特徴の高級柑橘です。一般的にはデコポンという名称で知られています。薄皮ごとほおばると、ジューシーな実から、よい香りととも甘さがふわっと広がります。深みのある味の虜になる方が多い柑橘です。

3kg/2,500円

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せとかとげ色付テープ

続いてこちらは、農園主一押しの品種『せとか』です。甘さもさることながら、実のぷるぷる感がたまりません!皮は薄いため、食べるときには皮ごと切るオレンジカットが向いています。清見オレンジとアンコールが元親で、それにマーコットオレンジを掛け合わせたと聞きました。

2月はできる限り木に実らせたまま熟させ、糖がのってきたものから収穫していきます。木ごとに実の熟し方が異なるので、試しに実を1つ2つ採って専用の機器で酸を測り、その上で収穫する順番を決めているそう。その目印となるのが木に巻いた色付テープです。

おいしそうな見た目に反して、この『せとか』は収穫がとても大変なんです。見てください、この鋭いとげ!そしてこの長さ!枯れたとげであれば、靴でも貫通する鋭さです。収穫の際、木と木の間を通る度に服がひっかかり、実を1つ1つ手で収穫するのは本当に大変な作業。まさに園主泣かせの品種です。

いままでご覧いただいた品種にも多少のとげはありましたが、この『せとか』は別格。収穫作業自体ももちろん大変なのですが、とげによって実が傷ついてしまうこともあるんです。そのため『せとか』の木も、風雨をしのげるように、ハウスの中で大切に育てられています。

せとか 静岡県産

農園主一押しの柑橘です。とろけるような食感と濃厚でジューシーな味わいから「柑橘の大トロ」といわれる現在大人気の新品種です。

3kg/2,500円

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グレープフルーツ
グレープフルーツ

そして、個人的に注目な品種をもう1つご紹介。この木はなんだと思いますか?

これは日本では珍しい、グレープフルーツの木です。ぶどうの房のように連なって成ることからグレープフルーツの名がついたといわれていますが、ここで見たものは、そんななり方はしていませんでした。園主によれば、房のように連なったならせ方をしたら、実が大きくならないそう。手間がかかっても、一つ一つの実を大切に育ててゆく。日本の農家さんのこだわりが垣間見えます。

こちらのグレープフルーツは4月~5月の出荷予定です。実の色は、普段私たちが目にするグレープフルーツの色とは異なり、ルビーのような濃い赤系。表面の皮に、中の実の色が出てきているようにも見えます。

グレープフルーツは、みかんなどと比べるととても酸味があります。すっぱい味が好きな女性の方に個人的にはお勧めしたいですね。もちろん酸味だけでなく、人を惹きつける独特の味わいも特徴。国産のグレープフルーツは、輸入品のように防腐剤や防かび剤を使っていないので、その点も安心ですね。

今回お伺いした農家さんだけでも、これだけ多くの品種を栽培しています。もちろんそれぞれの品種により、温度、水分量、土、剪定の仕方が変わってくるので、品種が増えれば増えるほど、その分手間がかかります。さらに木の栄養となる肥料は、牧場と共同で有機肥料を作っているそう。完熟堆肥による土作りをすることで、天候や害虫に負けない丈夫な木を育て、できる限り農薬は使わないといいます。

ただ柑橘類には、消毒薬を使わないと、ほぼ100%実の表皮に黒い点がついてしまいます。黒点病というものらしく、中の実にはまったく影響がないそうですが、買ってもらいにくいため、商品にはならないそう。みなさんがそれを知って、平気で買ってくれるようになったら、より農薬に頼らない安心安全なものが作れるのですが…。

柑橘類といっても、みなさんがよく知るみかんをはじめ、その種類はさまざま。時期ごとに出回る品種も異なるので、ぜひその時期ごとの果実を食べ比べてみてください。きっと自分好みの柑橘に出会えると思いますよ。

グレープフルーツ 静岡県産

珍しい国産のグレープフルーツです。実の色はルビーといわれる濃い赤系です。とてもジューシーで酸味もあり、奥に独特の味わいがあります。

2kg/1,650円

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静岡県で様々な品種の柑橘を育てている農園をご紹介します

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