井戸

日本はとても水に恵まれた国

私が小学生の頃(今から40数年前)に住んでいた東京都下の三多摩地域の水道は地下水でした。その後、引っ越して埼玉県に移った時に一番感じたことは「水が不味い」。

日本はどこに行っても蛇口をひねれば、いつでも水道水が飲める国。2015年の時点で全世界で推定6億6300万人の人々が、改善された水源を利用することができずにいるそうです。そう考えると日本はとても水に恵まれた国なのです。

だからこそかもしれないけれど、水の美味しさが分かってしまう。水に恵まれた日本人だけに、舌や皮膚感覚が研ぎ澄まされてしまって、海外で暮らしている人に比べると、日本人は微妙な味や肌触りに気づき過ぎる傾向があるように思います。

軟水と硬水

飲料水には硬水・軟水という分け方があります。

硬水と軟水の区分は、簡単にいうと水の中にミネラル、特にカルシウムとマグネシウムがどれだけ含まれているかということです。WHOの分類では次の通り。

  • 軟水 0~60mg/l
  • 中程度の軟水 60~120mg/l
  • 硬水 120~180mg/l

ちなみに日本の水道水はほとんどが軟水です。

しかし世界的に見みると西洋では硬水が主流です。山から流れる川が長いところが多いため、必然的にミネラルを多く含んだ水になるのです。

ヨーロッパの川

水の違いで料理も変わる

料理をするとき、この水の違いは結構重要だったりします。

例えば肉の煮込み料理では、硬水を使うと肉の固くなる成分とミネラルが結合して灰汁となり、柔らかく臭みのない煮込みになります。硬水でパスタを茹でると塩を入れなくてもアルデンテができますし、ジャガイモは煮崩れしにくくなったりします。西洋の料理は硬水との親和性が高いのです。

一方で軟水は、お米や豆をふっくらと炊くのに適しています。野菜が柔らかく煮えますし、素材の旨味や香りを引き出す和食の料理に向いているのです。

お茶でも同じようなことがあります。水の硬度が高くなると旨味が抽出されにくくなるので、旨味を味わう日本茶には軟水が好ましく、香りを楽しむ中国茶や紅茶は硬水が向いているそうです。

現在の日本の水は、ほとんどが軟水なのですが、それでも地域によって多少の違いがあります。この水の硬度の違いが食文化に影響を与えたこともありました。関東と関西で出汁の原料が違う理由の一つが水にあるらしいのです。

昔の物流の影響もあったようですが、西と東の水の性質の違いが影響していたのではといわれています。関西の水は軟水の中でもミネラルが少ないところが多かったので、昆布の味をしっかりと抽出することができました。これに対して関東(江戸)の水は関東ローム層の影響か、ややミネラルの含有量が多く、昆布の旨味がミネラルのせいで抽出されにくいため、かつおなどの魚を多く使うようになったそうです。

バーチャルウォーターとは

水を世界一輸入しているのは日本という話を聞いたことありますか?

これは、ミネラルウォーターを輸入しているということではなく、食料自給率が低い日本が海外から輸入している食品を作るためには、大量の水が使われているということらしいです。農産物や畜産物を育てるためには、それほど多くの水が使われるということ。バーチャルウォーターといわれているそうです。

清らかな水でないとおいしく育たない農産物ならば当然、世界的にも恵まれた水がある日本で作られる生産物はいいものができるはず。特に水の影響を受けそうな作物を育てている産地に行ってみました。

わさび田

日本だから作れた農作物「わさび」

わさびは一年を通して温度が一定の湧き水がある環境でないと育ちません。そんな環境が各地にあるのは、世界の中でも日本くらいでしょう。ここ静岡県の有東木は、わさび発祥の地といわれている場所です。わさびは「畳」と呼ばれる独特な田で作られます。「畳」は大きな石を一番下に敷き、徐々に大きさを小さくして、地面の表面20cm位に砂状の作土を敷いたものです。こうすることによって、水が表面から根の先までいきわたり、わさびが大きく育つのです。

有東木の農家自家製わさび漬け

わさび作りは「静岡のチベット」とも呼ばれる小さな集落で行われています。そんな秘境の地だからこそ、綺麗な水と澄んだ空気が本物のわさびを育てます。
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稲穂

棚田米がおいしい理由

新潟県弥彦の精米所にも伺いました。お米は産地も重要ですが、精米したてということもポイントです。獲れたお米は、こちらで精米して当日か翌日には出荷されます。お米マイスターでもある社長の信田さんに美味しい棚田のお米の話しを聞くことができました。

棚田米は平地の田んぼと違って高いところにあるため、山から流れてきた雪解け水や雨水によって栽培されるので水がきれいなことが特徴です。水源に近いところにあるため、水の中にミネラルを多く含んでいます。また棚田には高低差があるから水が常に流れています。普通の田んぼだと、生活排水が混ざりやすいのですが、棚田にはそういったことがありません。きれいな水で育った米と淀んだ水で育った米では明らかな違いが出るそうです。

棚田米 加茂七谷地区限定こしひかり

名峰、粟ヶ岳の麓に広がる段々田んぼで育てられた棚田米です。夏になると蛍が飛び交う高柳川のきれいな水を利用しています。気候、風土も魚沼地区と同じ条件で栽培されており、魚沼に匹敵する美味しさとして昔から有名です。
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