第九話「漆芸の洗礼」
第十話「師匠とパリ娘」
フランスの工芸学校に通うパリ娘が、我が漆工房にてインターンシップ生として学び始めた。日本語での会話は出来ないものの、英語でどうにかコミュニケーションをとる事が出来ている。彼女が取り組むことになった金継ぎという技術や工程は、前回の記事でご紹介した通りである。
金継ぎの練習として、こちらで用意した陶器や磁器を壊してはくっつけ、壊してはくっつける日々を送る。さすが工芸学校で塗装技術を専攻しているだけあってパリ娘は手が早い。
しかし、自ら壊しては修復する事の繰り返しというのはいかがなものか。とある流刑地では穴を掘らされ、埋め戻すことをひたすら繰り返させられる拷問があり、発狂する者もいたという。
技術習得のためとはいえ、パリ娘が発狂しては困るので修行を始めて1ヶ月ほどで金継ぎの仕事を募集する事にした。私の友人の同僚という方から割れたコップの修復依頼をもらい、二人で受け取りに行く。
大切な器を自分で預かって修復して納めることはプレッシャーだろうが、美しく仕上げる責任感とやる気にも繋がることだろう。
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