柴田明

フランスの工芸学校に通うパリ娘が、我が漆工房にてインターンシップ生として学び始めた。日本語での会話は出来ないものの、英語でどうにかコミュニケーションをとる事が出来ている。彼女が取り組むことになった金継ぎという技術や工程は、前回の記事でご紹介した通りである。

金継ぎの練習として、こちらで用意した陶器や磁器を壊してはくっつけ、壊してはくっつける日々を送る。さすが工芸学校で塗装技術を専攻しているだけあってパリ娘は手が早い。

しかし、自ら壊しては修復する事の繰り返しというのはいかがなものか。とある流刑地では穴を掘らされ、埋め戻すことをひたすら繰り返させられる拷問があり、発狂する者もいたという。

技術習得のためとはいえ、パリ娘が発狂しては困るので修行を始めて1ヶ月ほどで金継ぎの仕事を募集する事にした。私の友人の同僚という方から割れたコップの修復依頼をもらい、二人で受け取りに行く。

大切な器を自分で預かって修復して納めることはプレッシャーだろうが、美しく仕上げる責任感とやる気にも繋がることだろう。

テキスト:柴田明(erakko)

京都で漆と木工の仕事をしている脱サラ職人。父は職人歴50年のガンコ者。絶望的な経済状況の中でおもしろおかしく生きています。アウトドア漆器ブランド「erakko」を立上げ活動中。

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金継ぎ

全てが順調と思われていたその時、パリ娘に漆を扱う者の宿命ともいうべき試練が訪れる。それは私も苦しんだ「漆かぶれ」である。

この漆かぶれがもたらす痒みは猛烈で、ひどくなってくると蚊に刺された時のそれをはるかに凌駕する。そして厄介な事に、漆かぶれは掻けば掻くほどその痒みの強さも範囲も広がっていく。もっとも辛いのは夜で、痒みに悶える悪夢にうなされ、寝ているのか起きているのかもわからない状態が朝まで続く。

治す方法はただ一つ。「掻きむしらない」というシンプルなものなのだが、これが苦しいのだ。痒みが我慢できなくなったら、掻かずに刺激を与えて痒みを抑えるしかない。患部に熱湯シャワーやドライヤーの熱風をあてる事などが具体策となる。

これが結構な快感でもある。我慢していた痒みが強い刺激とともに一気に解放されるのだからたまらない。私が漆を扱い始めて間もなかった頃、ひどくかぶれた股間付近に熱湯シャワーをあてた快感に放心し、思わず失禁してしまった事は誰にも内緒である。

次のページに続く)

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