米澤ほうき工房

365日ほうきと向き合う

販売は催事と一部の店舗のみ。引き合いは多いが、工房での直売や発送は受けていない。そうした作業にまで手が回らないからだ。それよりも一本でも多くのほうきを作ることを選ぶ。

「1年間に一人で作れる数は、500~600本くらいです。一本一本、自分の娘をお嫁に出すような思いで作っています。だから大事にしてくれる人に使ってほしいです」。

3人が家で顔を合わせても、いつもほうきの話。たまにある休日でもいつの間にか3人が工房に集まっている。初めは家業を継ぐことに反対した勝義さんと純子さんも、「忙しくて大変」と言いながらも嬉しそうだ。

資修さんの話からは、大変な作業をも苦にしない、あるいは大変でもその苦労を乗り越える、ほうき作りへの思いと情熱が感じられる。

「以前は『仕事はお金じゃない』なんてセリフはきれいごとだと思っていました。でも、ほうき作りを始めてからは、そう思うようになりました。お客さんからのメッセージが次につながっています」。

資修さん道具資修さん

ほうき作りのこれから

資修さんは厚みのあるがっしりした手で、ほうき作りの一部始終を実演してくれた。穂を束ねるところから始まり、麻糸での編み込み。穂の付け根を固く縛る大締めに、柄の取付け。仕上げに至るまで全ての工程が手作業だ。自然素材のみで作られるほうきは、その一本一本が繊細で美しい。

資修さんには、新しい試みに挑戦する和紙職人や木工職人らの仲間がいる。伝統に現代的な要素を取り入れたり、ジャンルを越えてコラボレーションしたり、その枠にとらわれない。衰退が叫ばれる工芸の世界で、ほうきに限らず視点を変えて眺めてみれば、まだまだ可能性があるのではないか。そう考えるとわくわくする。

協力:米澤ほうき工房

〒399-0701
長野県塩尻市広丘吉田276-28
TEL0263-57-3848

テキスト・写真:鈴木俊輔

長野県のローカルライター・編集者。東京の出版社勤務を経て、フリーライターに。長野県を拠点に、人の思いを伝えるインタビュー記事を執筆。

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